ああ、いっぺん言うてみたかった

November 21, 2014

3歳娘殺害:「川に落とした」24歳母逮捕 新潟・燕

20141121_milkシングルマザーの子供が内縁の夫に殺される。という事件は、生物のオスの習性として理解できる(許されるという意味ではない)。が、母親が腹を痛めて産んだ子を殺すというのは、他の生物でみられる現象ではない。一体、どういう理由で、こんな事が起こるのだろう。というわけで、色々考えたりしてみた。

その前に、シングルマザーの方から説明しとくと、、、、季節繁殖によらない繁殖を行う社会的な種において、生殖上の利害の対立から生じた結果である・・・メスの子供を新しい繁殖相手のオスが殺すことによって、メスはより早く繁殖可能状態を回復し、そのオスが自分自身の子供を作ることが可能となる・・・からである。


これに関しては、「乳首を吸う頻度は?」「アマージ錠2.5mg」あたりでも触れてるんだけど、子育てやってる時のメスは妊娠できないから、その子供を殺して、子育てから解放し、自分の子を宿させるって仕組みだ。人間の場合は、そんな簡単な話じゃないのはわかってるけど、ベース(脳の辺縁系)にあるのは間違いないだろう。ただし、ギリシャ神話や聖書や記紀をみても、自分の胤じゃない子供を殺す話はほとんど無い※ので、歴史以前から大っぴらに語れる行為ではないことは間違いない(秘密裏に実行せざるを得ない状況でのみ行われたようだ)。

※アウリスのイピゲネイアは、アガメムノンが我が子を生贄にする話だが、強奪のごとく娶った妻の前の夫の子だった可能性を残して、別の怖さの話にもなっているから、このテーマとは合わない。


でも、大っぴらに語れない行為というのは、後天的に獲得した価値観(オスの社会が作り上げた)だと思われるから、この辺が≪母親による実子殺し≫を考えるヒントになるのかも。


下の引用は、内縁の夫による子殺しの背景

どうして、ある種の動物の大人のオスは子供を殺すのか?(Why some male animals kill infants)

Science November 14 2014, Vol.346

いくつかの動物種の社会的行動において最も忌まわしい事柄の一つは、大人のオスが子供を殺すことである。

LukasとHuchardは、ネズミからマングース、コウモリから熊に至る多種多様な社会的システムを有する哺乳類のグループを観察した。

オスによる幼児殺しの行動は、季節繁殖によらない繁殖を行う社会的な種において、生殖上の利害の対立から生じた結果であるらしい。

メスの子供を新しい繁殖相手のオスが殺すことによって、メスはより早く繁殖可能状態を回復し、そのオスが自分自身の子供を作ることが可能となる。

進化的には、メスによるたった一つの効果的な防御方法は一妻多夫になることである。

すなわち、複数のオスとつがいになっているメスになることによって、どのオスもそのメスの子供が自分の子供かそうでないかを見分けることが困難になるからである。

The evolution of infanticide by males in mammalian societies (Science, this issue p. 841)

さて、タイトルの母親による実子殺しの件

3歳娘殺害:「川に落とした」24歳母逮捕 新潟・燕

毎日新聞 2014年11月20日 23時49分(最終更新 11月21日 01時09分)

 3歳の娘を川に落として殺害したとして、新潟県警捜査1課と燕署は20日、同県燕市吉田堤町、事務員、佐藤あゆみ容疑者(24)を殺人容疑で逮捕した。

 容疑は19日夜、同市吉田浜首町の西川にかかる橋の欄干から長女心優(みゆ)ちゃん(3)を落として殺害したとしている。容疑を認めているという。

 同署によると、佐藤容疑者は20日午前10時ごろ、同市内の病院で「目を離したすきに娘がいなくなった」と話したため、同署が病院や付近の川などを捜索。午後3時ごろ、橋から約1キロ下流で心優ちゃんが遺体で浮いているのを発見した。

育児に疲れて、我が子を殺そう・・・と思い詰めた女性は少なくないと思うのだが、実際は、なかなか実行できるものではない(女性じゃないから、ホントはよくわからない。性淘汰の書物を読むと、自分の利益が最大限になる為なら、産んだ子も殺す場合も考えられるのかもしれないが・・・ドーキンスによれば、生体は遺伝子の乗り物だから、自分のコピーが少なくなる方向の選択は考えずらい)。

ヒトは集団で生きていく事で、自分たちの利益を最大化した。採集、狩猟、のちに出現する園芸、農業は、集団行動のメリットが活かされる。その為、ヒトは地球上に数を増やしたのだが、増えれば当然、色んなことが起きる。得手不得手もある。掟を作って、大同小異、ほどほどに折り合いをつけるようになる。

生産性が向上し、スケールメリットが出てくると、役割分担が始まる。身分制度が出来上がる。余裕が出来ると「人間らしく生きるためには」などの思考を始め、道徳、宗教が出来上がる。

他人より、良いポジションを得たいために、我が子を良い地位につけたいために、他者に良く思われようとし、予め教育を施すようになる。個体間に差が出る。幼いころから将来が見えるようになる。

将来が自分の思い通りにならない状況では、厭世的になる個体も出現する。

現代では、他者に良く思われたい気持ちは、羨ましがられる気持ちとも重なる。子育て中でも遊びに出かけ、余裕があると思われたい。綺麗でいたい。他の男からも選ばれたい。他の女に勝ちたい。

子供の無い時代に出来ていたことが出来なくなることに劣等感を抱き(他者と自分との比較)、自分の楽しみ(利益)に対して評価できなくなる。他人の楽しみ(みんなでワイワイ)が、自分のそれよりも良いものだと感じる。あるいは、自分の周りの子育て中の母親と自分を比較し、自分に出来ていないことばかりに注意が向くようになる。

さらには、夫の胤より、不倫の胤の方が、将来、(金銭的)メリットが大きいかもしれないと考えたりして。


と、思いつくままに、書いてみたのだが、、、、、よくみれば、なぁ~んだ、どれもこれも、ヒトが多すぎるために起こることで、情報が多すぎることで起こりそうである。


「必要とされる前に価値がある情報は無い」とは、普段、薬学生へのレクチャーで耳にタコが出来るほど言ってることでもあるのだが、母親がホントに困る前から、知らないがゆえに不満が無い状況にあるときから、あれやこれやと情報の洪水で溺れさせ、知らないこと、出来ないこと、に対して不安をあおっている結果のようでもある。

結局、母親の実子殺しは、自分の価値観を信じられなくなるような、自分の価値観で生きていくと損をするような気にさせる、現代の教育環境に行く着くのかもしれない。

価値観は、人それぞれあってよいのは、生物学的な多様性がホモ・サピエンスが栄える為に必要なのもにも関わらず、そのことを教えず、道徳的、人道的な教育ばかりを優先させた結果、多様性が失われ、画一的になってしまったのではないだろうか。


というわけで、私は、小学校、中学校、高校と生物学を必修として、生物の持つ残酷な一面も隠さず(そもそも、世の中は弱肉強食ではなく適者生存なのだが、それとて、たまたま不適切だった個体には悲惨なハシナであるが、「どうして、悪い事もしてない私がこんな目に」などという気持ちにはならずに済む)、いかに、多様性のある価値観が大切かを教えることから始めたいと思っているのだが、どうだろうか?

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March 15, 2013

抗生物質の作用機構の再検討(Antibiotic Mechanisms Revisited)

20130315_antibiotic_mechanisms_revi薬理学で“作用機序”を習うと、薬が100%効かないのが不思議に思えてくる。薬学部を卒業したての頃、よく、そんなことを思った。

今じゃ“作用機序”なんてものは、薬を使用した時に、誰にでも目に見える現象を都合よく説明できる、目に見えない数多くの現象の一つが、たまたま目に見えたものである・・・・と思っているから、『抗生物質の作用機構の再検討』なんてことに驚くことも無いのだが、、、、

薬が効かない理由に、こんな説明を用いれば、「科学的ではない」と患者さんに怒られてしまう。

もっとも、現代は医療に対するあまりにも過度な信頼が招いている“トラブル”が後を絶たないから、医療=医学が、「実は、こんなに不確実なものなのです」ということを“一般の人”に知ってもらう為にも、“一般紙”に取り上げてもらいたい“ニュース”なんだけどなぁ・・・・と思ったりして・・・・・


というわけで、Science March 8 2013, Vol.339 に掲載されているその内容を引用しておきます。

Science March 8 2013, Vol.339

最近の研究では、殺菌性抗生物質の細胞死滅機構として、活性酸素(reactive oxygen species;ROS)が関与する共通的な機構が示唆されていた。

2つのグループが多様な実験を用いてこの仮説を検証し、キノロン系抗生物質、ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド抗生物質では、酸素(あるいは硝酸塩)の有無に関わらず同レベルの殺菌効能があることが見出された。

Liuらは、抗生物質に晒された細胞中で過酸化水素が増えないことを観察し、抗生物質への暴露と、酵素中での鉄-硫黄クラスターの崩壊やDNAに対するヒドロキシラジカル損傷のような酸化的損傷に関して予想された症状との間には関連性がないことを見出した(p. 1210)。

同様に、Kerenらは、ヒドロキシフェニルフルオレセン色素の測定から推測されるROSの生成と細菌生存の間に相関がないことや、チオ尿素により作り出される顕著な保護効果が発現されないことを見出した(p. 1213)。

これらの結果は、ROSが介在する殺菌性抗生物質に対する従来の共通作用機構を支持していない。

Cell Death from Antibiotics Without the Involvement of Reactive Oxygen Species
Killing by Bactericidal Antibiotics Does Not Depend on Reactive Oxygen Species


“過度な信頼”が原因で起きた“事件”が、昨日の新聞(だったか?)に載ってた。たしか、内容は、こんな感じだ。。。

とある大学病院にて、、、、
のどの痛みを感じた人が診察を受けた。
医師は“舌がん”と診断した。
何故か手術を受けないまま、日々、経過し、、、、
その人は死んでしまった。
病院は、その人に入院、手術を勧めなかった、故に、その人は死んだ。だから、その咎で損害賠償して和解、、、、

たしか、こんな感じの内容だった。

テレビなどの影響だと思うけど、、、がんは早期に発見して手術し、その後、適切なケアをうければ、治る・・・・と思っている人がほとんどだと思う。でも、ホントのところ、、、、、ぶっちゃけた話、、、、、

ぜんぜん違う。早期だろうと後期だろうと、死ぬ人は死ぬし、助かる人は助かる。そりゃ、統計学的には、積極的に濃厚な治療をすれば、助かる人が、数パーセント増えるのかもしれないけど、ほとんど差は無い。数か月の延命は、3割くらいの人には約束されるかもしれないけど。(積極的な治療を受けるプロセスが、避けられない運命を受け入れる為に、本人にも家族にも必要なのだという話は、置いといて)


抗がん剤って、“作用機序”だけをみれば、「どうして、がんを治すことが出来ないのだろう?」って不思議に思うくらい、ロジックは科学的である。

なのに、この有様。

考えないわけにはいかない!

1.病気の原因は分かった!
2.だから、治療法も完璧!
3.薬の効き方も解明できた!
4.でも、病気は治らない!!!

どこかに、うその情報が入っている!!


20130315_objectionゲーム『逆転裁判』では、矛盾が生じるのは、どこかに“ウソ”の情報が入っているからだ。その“ウソ”に「異議あり!」と突っ込みを入れる。まさに、薬物治療にも言えそうである。

話は変わるが、先日、ある人から、こんな話を聞かされた。あるお医者さんにもらった薬を適当に飲んでたらこっぴどく怒られた。別のお医者さんじゃ、こんなこと無かったんだけど、なんで、同じような薬なのに、こんなに違うの?「ちゃんと飲め」って言ったり「適当でいいよ」みたいにさぁ??

その人は、20年来の“顔見知り”なので、ぶっちゃけた話が可能である。

「そりゃ、お医者さんによって違うのは当然ですよ。だって、治療方針とか信念とかが違うんですから」

「なに?それ、、信念??」

「いや、ぶっちゃけた話、薬の効果って、完璧を100%とした場合、自覚症状を緩和する薬は別として 1~30% 程度なんですよ。その30%を100%引き出すべきであるって考えてる人もいれば、完璧にやっても30%なんだから・・・って考える人もいる、いろいろいるのは不思議じゃないですよねぇ?」

「ふ~ん、そんなんだ。まぁ、薬の効果なんて、そんなもんだとは思ってたけどさぁ」


心の中じゃ、私は、「人生において、その人が遭遇するトラブルはいっぱいある。病気もその一つだ。そのトラブルの“その後”を30%も変更できる“手段”を、ホントはスゴイって思って欲しいんだけどなぁ・・・・・」と。


それにしても、先の“舌がん”の病院、どうしてお金払って和解したんだろう?

もしかして、、、、、腹黒い裏まで読んでしまう、私の悪い癖(藪にらみ)が杞憂であることを願って、筆をおこう。

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February 01, 2013

再発性 Clostridium difficile 感染に対するドナー便の十二指腸注入

20130201_duodenal_infusion_of_donorこれは、“アンチバイオティクス”より“プロバイオティクス”が、より適切な治療法であることを示しているひとつの実例だが、これ以外にもこのようなケースは多いと思われる。ただ、、、

どうやって、それ(適切な微生物環境)を構築するのかが問題だ!

マイクロバイオーム研究が明らかにした事実は、『ヒトの体には、数にして1000兆個のバクテリアが“共生”しており、そのほとんどか、実態がわかっていない』ということだ。

なにしろ、彼らを“生きたヒト”から引き離して培養出来ない(培養できるのは1%ほど)んだから、どうしようもない。が、かろうじて、メタゲノム解析という手法で、それらの微生物の持つ遺伝子(総数300万種類があり、成長や生命維持、オメオスタシスに貢献している)を研究することが出来るようになってはいるが。。。


この“ドナーうんち”の十二指腸への注入(ドナー便移植)も、メタゲノム研究が進めば、形が変わるのかもしれないが、何しろ、生きたまま、移植しなくっちゃ意味ないってんだから、ほとほと、うんち以外には難しいのである。


例えば、“風邪をひきやすい”体質を克服するために、サプリメントなんかより微生物を移植したい・・・・なんてことを考えたとして、、、、、他人の“痰”を“飲む”ことが出来るのか?ということが、現実の問題になってくる。医学用語では“認容性”ってヤツだ。

この“うんちの移植”にしたって、精神的な面での“認容性”はかなり低いと思われるしね!

Duodenal Infusion of Donor Feces for Recurrent Clostridium difficile

E. van Nood and others


背 景

再発性 Clostridium difficile (C. difficile)感染は治療がむずかしく、抗菌薬療法の失敗率が高い。再発性 C. difficile 感染の患者において、ドナー便の十二指腸注入の効果を検討した。


方 法

患者を、次の 3 種類の治療法に無作為に割り付けた:最初にバンコマイシンレジメン(500 mg を 1 日 4 回、4 日間経口投与)、続いて腸洗浄、その後経鼻十二指腸チューブを用いてドナー便の溶解液を注入;標準バンコマイシンレジメン(500 mg を 1 日 4 回、14 日間経口投与);標準バンコマイシンレジメンと腸洗浄の併用。主要エンドポイントは、10 週後に C. difficile 感染に関連する下痢が消失し、再発がないこととした。


結 果

試験は中間解析後に中止された。注入群では、16 例中 13 例(81%)で初回注入後に C. difficile 関連下痢症が消失した。残りの 3 例は別のドナーの便で 2 回目の注入を受け、2 例で消失した。C. difficile 感染の消失は、バンコマイシン単独群では 13 例中 4 例(31%)、バンコマイシン+腸洗浄群では 13 例中 3 例(23%)で認められた(注入群との比較についていずれも P<0.001)。有害事象は、注入群で注入日に軽度の下痢と腹部痙攣が認められたことを除き、3 群間で有意差は認められなかった。ドナー便の注入後、患者の便は細菌の多様性が増加して健常ドナーと同程度になり、バクテロイデス種とクロストリジウムクラスター IV、XIVa が増加し、プロテオバクテリア種が減少していた。


結 論

再発性 C. difficile 感染の治療において、ドナー便の注入は、バンコマイシンの使用よりも有効性が有意に高かった。(オランダ健康研究開発機構、オランダ科学研究機構から研究助成を受けた。Netherlands Trial Register 番号:NTR1177)

N Engl J Med 2013; 368 : 407 - 15.
Copyright (C) 2013 Massachusetts Medical Society. All rights reserved.


さて、今期の第3期生を受け入れてないから、ブログもマメに書こうなんて思っていたのだが、最近じゃ、facebook の方が忙しくって、なかなか、ままならない。。。

書くネタはあるんだけど、昔みたいに、世の中を不合理、不条理、大衆の誤認識を「オレが正してやる」なんて、また「オレの藪にらみが、変化の切っ掛けになれば」なんて気持ちが、ほとんど無くなってきちゃっているのも、また、ブログが書けないもう一つの理由でもある。

いや、ほんと、世の中、なかなか変わるもんじゃない。。。一時、ある世代のある人たちの意識を変えられたとしても、アンパンマンの人気が不変であるがごとく(後から生まれてくる子供たちで“ファン”の入れ替え現象が起きてる)、世の中のコンセンサスは、法律で強制的に変えでもしない限り、変わるもんじゃない。。。

ってのを、50歳を目前にして、ほとほと、気づいてしまったってのもあるし。


世の中のコンセンサスは変えることが困難、、、わかりやすい例を示せば、、、こんなのもある。

肥満に関する神話、俗説、事実

Myths, Presumptions, and Facts about Obesity

K. Casazza and others


背 景

肥満に関する多くの信念は、それを支持する科学的エビデンスがないにもかかわらず存続し(俗説)、なかには矛盾するエビデンスがあるにもかかわらず存続しているものもある(神話)。エビデンスのない信念が普及することによって、不十分な情報に基づく政策決定、臨床および公衆衛生における誤った勧告、研究資源の無益な分配が起こるおそれがあり、また、エビデンスに基づく有用な情報から注意がそれる可能性がある。


方 法

有名メディアと科学文献をインターネットで検索することにより、肥満に関連する神話と俗説を同定し、検討と分類を行った。また、エビデンスによって十分に支持されている事実についても、公衆衛生、政策、臨床での勧告に実用的意義があるものに重点をおいて検討した。


結 果

肥満に関連する神話については、エネルギーの摂取または消費が少しずつ増加することの効果、減量の現実的な目標の設定、急激な減量、減量の準備、体育の授業、授乳、性的活動時の消費エネルギーの 7 つを同定した。俗説については、朝食の規則的な摂取についていわれている効果、幼少期の経験、果物・野菜の摂取、体重の増減、間食、構築(人工的)環境の 6 つを同定した。最後に、エビデンスによって支持されている事実については、健全な公衆衛生、政策、臨床での勧告の策定に関連している 9 つを同定した。


結 論

肥満に関する誤った、あるいは科学的なエビデンスのない信念は、科学文献と大衆メディアの両方で蔓延している。(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた。)


N Engl J Med 2013; 368 : 446 - 54.
Copyright (C) 2013 Massachusetts Medical Society. All rights reserved.


というわけで、本日も、なかなか筆が進まないのだが、、、ちっょと前、何か書こうかな、思って書き始めて、「まっ、俺が書いてもしょうがないかっ。めんどくさっ」と途中で捨ててあった文章を引っ張り出して、文字を埋めることにしようと思う。それは、、、、

『米国における 21 世紀の喫煙の害と禁煙の利益』って論文を読んで、ふと感じたことなのだが、、、、


40歳までに禁煙しよう!

ここをご覧の方で40歳以下の方は、今すぐ、禁煙しよう!!

というのも、40歳以下であれば、「喫煙者では、喫煙歴のない人と比較して平均余命が 10 年以上短縮する。40 歳までに禁煙すると、継続的喫煙に関連する死亡リスクは約 90%低下する」からである。

じゃ、40歳を超えちゃっている人は、禁煙に意味がないのか?

誰かが、研究しているかもしれませんので、その結果を待とう!!


今回の“ネタ”は、NEJM JANUARY 24, 2013 号より、、、

米国における 21 世紀の喫煙の害と禁煙の利益

21st-Century Hazards of Smoking and Benefits of Cessation in the United States

P. Jha and others


背 景

1980 年代の研究からの推定では、喫煙は米国における 35~69 歳の男女の死亡の 25%の原因であることが示されている。さまざまな年齢における現在の喫煙リスクと禁煙の利益について、全米を代表する指標は得られていない。


方 法

全米健康聞取り調査において、1997~2004 年に聞取りを受けた 25 歳以上の女性 113,752 人と男性 88,496 人の喫煙歴と禁煙歴を入手し、それらのデータを 2006 年 12 月 31 日までに発生した死亡(女性 8,236 例、男性 7,479 例)の原因と関連付けた。現在喫煙者の、喫煙歴のない人と比較した死亡に関するハザード比は、年齢、教育水準、肥満度、アルコール摂取で補正した。


結 果

25~79 歳の参加者において、現在喫煙者の全死因死亡率は、喫煙歴のない人の約 3 倍であった(女性のハザード比 3.0、99%信頼区間 [CI] 2.7~3.3;男性のハザード比 2.8、99% CI 2.4~3.1)。喫煙者における超過死亡の多くは、腫瘍性、血管系、呼吸器系、および喫煙により引き起こされる可能性がある他の疾患によるものであった。25 歳から 79 歳まで生存する確率は、喫煙歴のない人では現在喫煙者の約 2 倍高かった(女性 70% 対 38%、男性 61% 対 26%)。現在喫煙者では、平均余命は喫煙歴のない人と比較して 10 年以上短かった。25~34 歳で禁煙した人、35~44 歳で禁煙した人、45~54 歳で禁煙した人は、喫煙を継続した人と比較して、平均余命がそれぞれ 10 年、9 年、6 年長かった。


結 論

喫煙者では、喫煙歴のない人と比較して平均余命が 10 年以上短縮する。40 歳までに禁煙すると、継続的喫煙に関連する死亡リスクは約 90%低下する。


N Engl J Med 2013; 368 : 341 - 50.
Copyright (C) 2013 Massachusetts Medical Society. All rights reserved.


50歳の人が禁煙したとして、その恩恵は?

60歳の人では?

80歳の人は禁煙するといいことあるの??

ハッキリ言って、80歳の人に禁煙を進めることに医学的な意味はないだろう。では、社会学的にはどうだろう?

今朝、そんな話を職場の同僚としていた。

たとえば、80歳を超えた高齢者では、身体的な影響よりタバコを買いに外出すること自体の影響があるようなことを聞く。ようするに買い物に行ってころんだりすることのことだ。本人は、「買い物に出ることが、良い運動になる」と嘯いているとか。雪の降る日だって、タバコが切れれば買に行く。。。。(それも含めて「煙草の害だ!」という人は、これ以降、読まなくてもいいです)

といって、タバコの煙が「迷惑なのよ」とも、面と向かって言えないし・・・・・。


喫煙者に禁煙をすすめることの難しさは、基本的に医学的な側面と社会学的な側面を分けて考えなければならない所にあり、現実にはそれが上手く出来ていないところにある、と私は思っている。

医療従事者が80歳の人に「健康を考えて・・・」、、、、説得力は無い。


これは何も、タバコに限った事ではなく、インフルエンザなどの感染症でも、医学的な側面と社会学的な側面があり、いろいろと考えさせられる。

公衆衛生の面から、「風邪ひいてる時は、(他人に染すから)表に出るなっ!」のような考え方が増えつつある。

感染を拡大させる可能性のある人は外出を控えるべきでそれがマナーであるということを、どうどうと書いてあるホームページ(医療系)もある。が、しかし、インフルエンザウイルスは、感染者全員に発熱などの症状を引き起こすのかというと、そうではない。

少なくない割合で、ウイルス感染者であっても症状の出ない人がいる。新型インフル騒動の時には、空港で発熱者だけに的を絞った検疫がいかに無駄であるかを証明する事にもなったのだが、病院でインフルエンザと診断された人だけに対して、「職場に来ないでね」「学校は欠席扱いにならないから休みなさい」では、感染を拡大させないという本来の目的は果たせない。

症状のないウイルスキャリアーがウイルスをばら撒くからだ。


そして、インフルエンザに限って言えば、その治療薬がさらに問題を複雑にしている。

シアル酸アナログは、ウイルスのライフサイクルとその作用機序から言って、病気そのものを治癒させる効果は無い。まして、ウイルスの量を減少させる効果もない。

しかし、直接、解熱させる効果はある(シアル酸そのものは、細胞間の情報を伝達する機能を担っていると考えられているから)らしい。

その為、インフルエンザに罹って解熱まで自然に経過した場合とは事情が異なり、タミフルを服用して解熱しても、ウイルス量は減っていないので、「5日間の治療期間を経て解熱しても2日間は登校不可」などと、学校保健法が改正される羽目になった。職場などでも似たような取り決めがなされていることだろう。さらに、学校保健法では、新型インフル騒動に関連してインフルウンザ自体がより危険な区分へとなっていたので、さらに問題が複雑になっている。

学校側としては、「何かあるといけないから」等々いろいろあるのだろうが、発熱した生徒には、何が何でも学校に来させちゃいけない・・・・と、その為に、発熱した生徒は病院に行って検査をして来てほしい・・・と。

とある医療系サイトで、マスコミがノロウイルスを“怖いウイルス”のごとく扱うのを「どうかと思う」との主旨のコラムを読んだ。

この医師が言うことには、ノロウイルスが危険なわけじゃなく、(高齢だったり、基礎疾患で)体力が無い人が脱水で死んだだけであり、そういうリスクの無い人にとっては、ただ、下痢したり吐いたりして、そのうち自然に治る病気の原因になるだけであると。

インフルエンザウイルスもこれと似たようなものであるが、学校側では、インフルエンザ感染をあたかも“恐怖のウイルス”であるかのごとく報道するマスコミによって、何かあった時に「感染対策にずさんな学校」などのレッテルを貼られることが、怖いのだろう。

さらに、本来、強毒性型と弱毒型のインフルエンザウイルスは、別物なのだが、同じ名前が付いているので、お役所は十把一絡げで「危険だ!」と。可能性としては、変異する可能性はあるにせよ(確率論で言ったら、飛行機が墜落するの恐れるのと同じ)。

というか、強毒型のインフルエンザウイルスは、ホントに“怖い”。それを、弱毒型が流行るほとんどの時に「怖い、怖い」と言ってると、いざと言う時に・・・・。こちらの弊害の方が怖い!!


また、“ウイルスが強毒か否か”と“感染者を拡大しないため”とは医学的な問題だか、マナーに関しては全く別物であり、このように、医学的な根拠がマナーの根拠とはならないのである。

にも関わらず、症状の出た人だけが、「感染者を拡大しないためマナーを守るべき」という、なにやら、ヘンテコな状況に、世の中、陥っている。(こういうコンセンサスを是正するのは難しい)


企業では、タミフル飲んでも飲まなくても、社員が職場復帰できる期間は短縮されない。
学校では、リレンザ吸入してもしなくても、登校出来るまでの日数に変わりはない。

100歩譲って、タルフルやイナビルに強毒性型インウルエンザウイルスに対する治療効果があったとして、弱毒型のインフルエンザにバンバン使って、耐性株を作り続けることに、意味はあるのだろうか?

タミフルやリレンザ、イナビルで治療することの意味の無さを、マナーの問題にすり替えて、複雑にし、誤魔化している。。。。。のかも、などと藪にらみもしたくなる。

だって、おとなしく寝ていれば、、、自然治癒の経過を辿れば、解熱する頃にはウイルス量の減っており、体調が戻った時、すなわち自然と体が動くようになった時が、出勤し、あるいは登校する時になるものを・・・・わざわざ、薬飲んで、1日早く解熱させても、出社もできないし、登校もできない・・・・(そりゃ、多少のウイルスはばら撒くだろうけど、無症候キャリアのばら撒くウイルスと大差ない)って、一体、何??


タバコの煙、匂いが“嫌い”な人が、“ヒトの健康”を理由に、禁煙を強制させようとすることは、マスクをして咳する人を“毛嫌い”するのに“ヒトの健康”を持ち出すのと同じであることを、認識しなければならない。


ようするに、他人を不快にさせる行為をしない事が“マナー”であるなら、“健康の為”などの大義名分を持ち出さなくても、ちゃんと機能するものでなくてはならない・・・と言いたいわけなんだね。

それと、、だから、、タバコを止めりゃ、『マナーを注意されてムカつく』みたいな“煩わしい”ことに“巻き込まれなくなる”よって、アドバイスがいいのかも。。。

で、『40歳までに禁煙しよう!」っと!


最後になるが、今朝、朝のニュースで、“ハエ”での実験結果が伝えられていた。

「空腹の時の方が、記憶力が良い」というものだ。これも、なんだかなぁの類なのだが、「ハエと人間を一緒にするな」って、やっぱ、言いたい。

例えば、同じ哺乳類のヒトとイヌで、キシリトールのインスリン分泌能が違うんですぜ!イヌでは、キシリトールでインスリンが分泌しちゃう。だから、キシリトール含有のダイエット食品を犬に食べさせると、低血糖で死んじゃう。ヒトじゃ、インスリンの“イ”の字も出ないのに。

そして、前にも書いたことあるけど、脳の半分の潰しても片麻痺しない“マウス”の脳の実験結果をヒトに当てはめるよりも、ひどい。ハエだよハエ!

どこぞの馬鹿な親が、我が子のテストの成績を気にして、朝ご飯食べさせないなんて“事件”が起きないことを祈るばかりだよね。


人間の記憶の仕組みは、まだまだ、ほとんどわかってないんだから。

神経生物学: 記憶の機構を再考する

Nature 493, 7432

2013年1月17日

長期増強(LTP)すなわち神経細胞間のシグナル伝達の持続的強化は、かなり以前から、記憶に相当する細胞レベルの事象だろうと考えられてきた。

だが、LTP維持の基盤となる特異的分子機構が明らかになり始めたのは、つい最近のことである。

しばらく前に、薬理的阻害剤を用いた実験を主な根拠として、プロテインキナーゼM-ζ(PKM-ζ)の持続的な維持がLTP維持に重要である可能性が示唆された。

今回、2つの研究チームが、遺伝子操作によりPKM-ζを持たないマウスを作成し、LTPと記憶におけるPKM-ζの役割をより直接的に検証した。

R HuganirたちのグループとR Messingたちのグループはそれぞれ、PKM-ζの喪失は、LTPあるいは記憶形成に影響しないことを見いだした。

そしてこのような変異マウスでは、PKM-ζが存在しないにもかかわらず、このキナーゼの阻害剤によって記憶が破壊される。

これらのデータは、LTP維持に対するPKM-ζの役割に疑問を投げかけており、長期可塑性を調節する重要な分子を探す研究が再び始まることになった。


Letter p.420
doi: 10.1038/nature11802

Letter p.416
doi: 10.1038/nature11803

News & Views p.312
doi: 10.1038/nature11850


神経: LTPと記憶について考え直す

Nature 493, 7433
2013年1月24日

2個のニューロン間のシナプス強度が迅速かつ持続的に強化される長期増強(LTP)現象は、学習や記憶の形成に関与すると考えられている。

これまでLTPは、新規記憶の形成に必要な脳領域である海馬のグルタミン酸作動性シナプスで詳しく調べられてきた。

しかし今回の研究で、神経伝達物質受容体タンパク質であるAMPA受容体GluA1サブユニットのみを重視する、従来主流となってきたLTPモデルの再考が必要になった。

LTPが起こるには、特定の種類のグルタミン酸受容体が必須というのではなく、1つのシナプスの近くに十分大きな受容体貯蔵プールがありさえすればいいらしい。

News & Views p.482
doi: 10.1038/493482a

Article p.495
doi: 10.1038/nature11775

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November 30, 2012

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針は4年に一度の改定

20121130_don_quixoteさてさて、私の職場では、薬学部の学生実習を行っておりますが、これの“意義”については諸説あれど、国が決めたことですから、我々、現場で働く薬剤師の責務であると思っております(師の付く職業は徒弟制度で培われるとも言われてますし)。しかし、職場の環境によっては、「忙しくて、それどころではない」とか、色々ありまして、薬学生の指導は“強制的”に割り当てられるというものではありません。要するに、学生を受け入れるかどうかは、最終的には、現場の判断というわけです。

というわけで、私のところも、諸般の事情により、一期分“お暇”を頂くことになりました。

というわけで(といったら暇そうにしているおもわれるのも癪ですが)、来年の4月いっぱいまでは、比較的、思いつくままにブログを更新しようかと思っているわけです。


で、タイトルの「ゲノム倫理指針は4年に一度改定」ですが、今回は、2012年12月12日に開催される厚生労働科学技術審議会技術部会で改定案が提示されるようです。

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針って、何?って、俺たちになんか関係あんのか?って思われるでしょうが、かなりというか、スゲェ~関係あります。

“個の医療”という言葉を聞いたことがあると思いますが、基本的に人体には“個性”がありますから、薬の飲む量ひとつとってみても、オーダーメイドが理想なのはよくわかると思います。しかしながら、現状は、個性を無視した“古典的平均値”を用いた指標で、ものごとは進んでいきます(個の医療、ちょっとずつは進んでいます。例えば非小細胞肺癌患者におけるALK融合遺伝子の検査とか。これ日本人の場合、このタイプは、全肺がん患者の5%で、この5%の人たちのために作られた薬でもあり、それ以外のがん患者には使えません)。

では、何故、それが出来ないのか?

理由は簡単です。指標が無いからです。  じゃ、さっさと作ってくれ!!  ほいきた、がってん・・・・とは、行きません。この指標を作るためには、どうしても個人情報に触れなければならないからです。個人が特定できないようにしつつ、うまい具合に研究を進めるには、、、、、

健康で長生きできる為に働いているであろう遺伝子多型や組み合わせ(発現も含め)のパターンなら、漏れたって、大した害にはならないでしょうが、その逆な遺伝子を持っている人の情報だったら・・・・。

純粋に科学的な好奇心が旺盛な科学者にとっては、その遺伝的な情報が人体にどのような“影響”を及ぼすのか?が最大の関心事であり、その他のことには無頓着、、、この資質は研究者にとっては大切であるわけでして、結果的にその事を責めることはできません。

でも、研究者と言ったって、ピンからキリまでいるワケで、、純粋で無垢な人たちばかりじゃなく、、全ゲノムシーケンスの解析はすでにに1000ドルになっているらしいですから、誰でも簡単に出来る、、、、

「だから、倫理規範が必要だろ!」ってことで、このようなものを4年に一回改定しているわけです(多分・・・苦笑)。


ふーん、じゃ、内容はどんなものなの?

・・・・(はっきりいって、読む気がしません。読みたい人はリンクを辿って読んでくだされ

というわけで、一昨日の「30 年間のマンモグラフィ検診が乳癌発生率に及ぼした影響」でも指摘した通り、個の医療が不可能な現状では、当然、事前に「この治療が、この人に効果があるのか?」なんて、わかる由もないのです(前出のクリゾチニブなどのように、理論的にこの人には効かないって方は、ちょっとずつわかりつつあるけど)。

だから、いきおい、古典的な平均値にのっとり、ブロイラーのように、(がんが)見つかりゃ、ハイ治療しましょ・・ってなるわけです。

そもそも、厳密な意味での“がん”が定義できてないわけですから、「念のため」とがんの診断基準を甘くすると・・・・がん患者が増えて、、、、当然、放っておいても自然に治癒しちゃう“新生物”が出来ちゃった人までもが“がん患者”にされるから、見かけ上の“治癒率”は向上し、、、、それが、「早期発見のおかげ」だと、マスコミとかが、言いふらすから、国民は勘違いし・・・・・・って構図なのでしょう。


さて、こういうロジックで話を進めると、当然、不要な治療を行わない事が出来るようになり、不要な治療の副作用で苦しむ人を救える半面、、、、「不治の病の人を見捨てるためのイイワケ作りか?」と非難される恐れもあるわけです。

「人間は、みな、平等なんだろう?」
「治ろうと、治るまいと、同じ治療を受けさせろ!」

とか。

でも、これにしたって、厚生労働省が認可している“抗がん剤”に完治をうたっている薬は無く、その効果は、せいぜい数か月の延命なのです。それにもかかわらず、「抗がん剤はがんを治癒させることが出来る薬だ」と勘違いしているから、「治療を受けることに意義がある」とばかりな感情もわいてくるんだと思います。

でも、この“数か月の延命”が、どれくらい“貴重”で“かけがえのないもの”なのかは、人によって、さまざまですよね。

それに、発病してない人に、「あなたは将来・・・・」っていう権利がだれにあるのか?

難しいですね。

ここまでくると、そもそも、「個の医療を性急に求めることは是なのか?」とも思っちゃいます。個の医療を進めるということは、良い面の他に、必要のない人には無駄な治療は行わないという残酷な面も持ち合わせているわけですから。

多分、こういう問題を、科学者や医療提供者だけで論じることに、無理があるんだと思います。

でも、しかし、個の医療とは別に、データベースつくりの為に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究には、十分な予算を付けてほしいもんです。「機が熟してから始めよう」では、日本の医療費の=貴重な税金の半分は“外資系企業”の懐に入っちゃうわけですからね。

今回改定される指針が主に想定しているのは、主に遺伝病(頻度は極めて稀ですが、疾患発症のリスクの高い一つの遺伝子によって発症する疾患)の遺伝子解析とのことだそうですが、これが研究の足かせにならないことを願います。

そして、研究予算の配分、、、次の政権に期待します。間違っても民主党のような「二番手じゃいけないんですか」みたいなことを考えている人たちには、任せたくありません。

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November 28, 2012

30 年間のマンモグラフィ検診が乳癌発生率に及ぼした影響

20121128_3mouseこの研究の背景には、『検診は、生命にかかわる疾患を、より早期に、治癒可能な段階で発見するものでなければならない』といった、医療従事者に課せられた“使命感”と、世の中の人々の“希望”に叶うものであって欲しいという“期待”が入り混じっているように感じる。

裏を返せば、『生命にかかわる疾患は、ほんとに、早期発見で治癒が可能なのか』という疑問が、医療従事者の側に、潜在的にあることを示しているともいえる。

結果は、、、、無難なところにまとめちゃってるのかなぁ~って。

個人的には、命に係わる疾患は、早期だろうと後期だろうと、治癒率は変わらず、すなわち治療に反応する人(体質)だけが治癒するって思ってるんだけどね。

だけど、治療を開始する前に、「誰が治療に反応するのか?」を探り当てるのは、非常に難しい(代謝酵素や受容体の多型だけにとどまらず、もっと多次元での話で)。その難しさの中で、医療従事者は「あたなには治療は無駄です」なんてとても言えない。

いろんな、問題(私は“医療は科学ではなく社会学である”が持論です)が絡み合って、さらに問題を複雑にしているものの一つに、この“検診”があるんだろうと思う。

Effect of Three Decades of Screening Mammography on Breast-Cancer Incidence

A. Bleyer and H.G. Welch


背 景

死亡率を低下させるためには、検診は、生命にかかわる疾患を、より早期に、治癒可能な段階で発見するものでなければならない。したがって、効果的な癌検診プログラムは、癌が早期に発見される率を高めると同時に、後期になって受診する率を低下させるものである。


方 法

サーベイランス・疫学・最終結果(SEER)のデータを用いて、1976~2008 年にかけての、40 歳以上の女性における早期乳癌(非浸潤性乳管癌、限局癌)および後期乳癌(局所癌、遠隔転移)の発生率の動向を検討した。


結 果

米国におけるマンモグラフィ検診の導入は、各年に発見された早期乳癌の症例数が 10 万人あたり 112 例から 234 例と、2 倍の増加に関連しており、増加の絶対数は 10 万人あたり 122 例であった。同時に、後期癌で受診する率は、10 万人あたり 102 例から 94 例へと 8%減少し、減少の絶対数は 10 万人あたり 8 例であった。一定の基礎的疾病負担があると仮定すると、検診によって追加的に早期癌と診断された 122 例のうち 8 例のみが、進行癌に進展すると予想された。ホルモン補充療法に関連する一過性の超過発生を除外し、40 歳未満の女性の乳癌発生率における動向で補正すると、この 30 年間で 130 万人の米国人女性で乳癌が過剰診断された(臨床症状の発現にはいたらなかったであろう腫瘍が検診で発見された)と推定された。2008 年には、70,000 人以上で乳癌が過剰診断されたと推定された。これは診断されたすべての乳癌の 31%に相当する。


結 論

早期乳癌の発見数は大幅に増加したにもかかわらず、マンモグラフィ検診により、進行癌で受診する率はわずかしか低下しなかった。どの女性が影響を受けたのかは確かではないが、この不均衡は、新たに診断された乳癌のほぼ 1/3 に相当する大幅な過剰診断があったこと、また、検診は乳癌死亡率に対して影響があったとしても小さいことを示唆している。


N Engl J Med 2012; 367 : 1998 - 2005.
Copyright (C) 2012 Massachusetts Medical Society. All rights reserved.


もひとつ、ちょっと古いんだけど、これなんかも、医療従事者は知っているけど、その真実を患者さんに言えない代表なんじゃないかな?
進行癌に対する化学療法の効果に関する患者の期待

Patients' Expectations about Effects of Chemotherapy for Advanced Cancer

J.C. Weeks and others


背 景

転移性の肺癌または大腸癌は、化学療法によって生存期間が数週間から数ヵ月延長し、症状が緩和される可能性があるが、治癒は得られない。


方 法

癌治療転帰調査・監視(CanCORS)研究(全米規模の前向き観察コホート研究)の参加者で、癌診断後 4 ヵ月の時点で生存しており、新たに診断された転移性(IV 期)の肺癌または大腸癌に対して化学療法を受けた 1,193 例を対象とした。化学療法によって治癒する可能性があるという期待をもつ患者の割合を明らかにするとともに、この期待に関連する臨床的因子、社会人口学的因子、医療制度的因子を同定することを試みた。データは診療録の包括的な再検討のほか、専門の面接者による患者調査から得た。


結 果

全体で、肺癌患者の 69%と大腸癌患者の 81%が、化学療法によって癌が治癒する可能性はまったくないことを理解しているという回答をしなかった。多変量ロジスティック回帰では、化学療法に関する誤った考えを報告するリスクは、大腸癌患者のほうが肺癌患者よりも高く(オッズ比 1.75、95%信頼区間 [CI] 1.29~2.37)、非白人患者やヒスパニック系患者では非ヒスパニック系白人患者よりも高く(ヒスパニック系患者のオッズ比 2.82、95% CI 1.51~5.27;黒人患者のオッズ比 2.93、95% CI 1.80~4.78)、医師とのコミュニケーションについてきわめて良好と評価した患者では、あまり良好でないと評価した患者よりも高かった(最低三分位群に対する最高三分位群のオッズ比 1.90、95% CI 1.33~2.72)。教育水準、機能状態、意思決定における患者の役割と、化学療法に関するそのような誤った考えとの関連は認められなかった。


結 論

不治の癌に対して化学療法を受けている患者の多くは、化学療法によって治癒する可能性は低いことを理解していない可能性があり、そのため、十分な情報に基づいて、自身の意向に沿った治療を決定する能力に欠けているおそれがある。医師は患者の理解を深められるかもしれないが、これは医師に対する患者満足度の低下という代償を伴う可能性がある。(米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた。)


(N Engl J Med 2012; 367 : 1616 - 25.)
Copyright (C) 2012 Massachusetts Medical Society. All rights reserved.


上は、言葉悪くいうと、「治るかどうかわからない治療に自己満足的な望みをかけて、湯水のごとく医療費を使っている現実」が、そこにはあるということだ。

結論にある「不治の癌に対して化学療法を受けている患者の多くは、化学療法によって治癒する可能性は低いことを理解していない可能性があり、そのため、十分な情報に基づいて、自身の意向に沿った治療を決定する能力に欠けているおそれがある」という言葉は、重く受け止めなければならない。


無駄を省くという意味でも。


久しぶりに、こんな事を書こうと思ったのは、昨日、古い友人から電話があったからだ。この友人は特定の政党を応援しているので、総選挙が近いから“お願い”の電話をかけてきたってワケなのだが。。。

そのお願いは「ハイハイ、じゃ入れとくよ」って簡単に済んだんだけど、、、、

最近の私は、政治に期待しても報われない、、、などと厭世的になっているせいもあって、世間話が消費税に及ぶにいたり、『増税する前にやることあんだろう?』って持論をぶちあげる羽目になったからだ。


日本では予算の中に占める医療費がかなり多くて、年々“兆”単位で増えている。

その為に、もうすぐ消費税率が上がろうとしている。

いや、国民の血税を「無駄なところ(医療費)に使うんじゃない」と言ってるんじゃない。

効果があるのかどうかも分からない行為を個人的な“希望”、“期待”の為に行うことの是非を問うことなしに行うな!と言いたのである。

さらに、そういうことを議論の俎上に載せもせず、続けることが、上の勘違いのように国民に「医療は万能である」と勘違いさせることにもつながるからだ。

それでも、国民の51%が、効果が無くても“希望”持ちたいというのであれば、私だって税金は当然払うのだ。民主主義国家の日本人だからね。医療を医学的な面からだけ論じるほど“お子様”じゃないし。

それに、ここにも何度も書いてるけど、医学、医療の限界に幻滅し、自分の仕事に自信を持てなくなり、落ち込んでいた私はロシュフコーの言葉「希望はずいぶんと嘘つきではあるけれど、とにかく私たちを楽しい小径(こみち)を経て、人生の終わりまで連れて行ってくれる」に精神的に救われてから、医療は患者さんに“希望”を与えるものであるという考え方に変わったこともあるし。

とはいえ、日本に石油が湧き、無尽蔵にお金が使えるなら話は別だが、限りある原資をどのように配分するのかということについては、人間、一人一人、価値観が違うわけだから、現実から目をそらさず、真実を公開し、その上で、どうするのがいいのか、“政治的”に決めてほしいわけなのだ。


でも、今、そんなことを言ってる政治家を私は知らない。というか、最近、「どうせ、そんなこと言える政治家なんているわきゃねぇよな。みんな“いい人”になりたがってるだけだからね」って思ってるから、テレビも見ないので知らないだけかもしれないけど。

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April 03, 2012

うんちの移植

20120403_toriyama実際には、ドナーの“うんち”を生食に溶いて肛門から注入するんだって。口からチューブを入れて、注ぎ込む場合も、あるらしいけど。

効果は、“劇的”らしいんだけど、現代人の“衛生感覚”からすると、かなり違和感がありそうだね。

基本的には、“細菌の移植”ってことなんだけど、、、、この細菌、、、人が認識している種類は、地球上に生息する全体の1%にも満たないってんだから、“うんち”そのものを移植するのが手っ取り早いわけ。だって、人間の“浅知恵”で“選択”したって、効果が無いんだもん。

っていうか、細菌のことを邪険にしすぎぃ~現代人。

っていうか、細菌は“悪者”扱いされてるけど、ほんとかな?

No. 12-0322-04
便移植はC. difficile大腸炎に有効である
Fecal Transplantation Works forC. difficileColitis
2012 March 22

経口抗菌薬療法を受けているにもかかわらず遷延する(しばしば何ヵ月も)Clostridium difficile大腸炎に苦しむ患者は、世界中の医師にとって難しい課題となっている。C. difficile感染症(C. difficile infection:CDI)に対する治療の大半とは異なり、便移植は疾患の根絶にきわめて有効であると言われているが、その成功を支持する公表されているエビデンスのほとんどは事例的である。今回、フィンランドの研究者らは、便移植による治療を受けたCDI患者について、これまでで最大規模の症例シリーズを提示している。
CDIに対して抗菌薬を最大で12コース投与された成人70人(平均年齢73歳、外来患者86%)から得られたデータがレビューされた。大部分の患者は3~6コース投与されている。便提供者の大半は、患者の近親者であった。移植は同一のプロトコールを使用して行われ、経口polyethylene glycol溶液による腸の前処置のあと、大腸内視鏡を通して便を盲腸に注入した。

移植の3ヵ月後、患者70人のうち66人が症状の完全な消失を報告した。反応しなかった患者4人は全員が、他の重篤な医学的疾患に加えて、C. difficileのなかでも病原性の高い027株を有しており、移植から3ヵ月以内に全員が死亡した。移植の翌年には、さらに4人の患者が再発し、そのうち2人は抗菌薬による治療が奏効し、残り2人は便移植を再び受けた。移植による合併症は報告されていない。


コメント:今回の研究で報告されている94%という高い根絶率を達成したC. difficile治療は、比較的軽度の疾患を有する患者の場合でさえ、他に報告されていない。移植を手配するための後方支援がそれほど困難でなければ、便移植はおそらくCDI治療のゴールドスタンダードになるであろう。残念なことに、組織化されたプロトコールが整備されていなければ、この治療はほとんどの医師にとってまだ手の届かない治療法である。

- Abigail Zuger, MD

Published in Journal Watch General Medicine March 22, 2012

CITATION(S):

Mattila E et al. Fecal transplantation, through colonoscopy, is effective therapy for recurrentClostridium difficileinfection.Gastroenterology 2012 Mar; 142:490. (http://dx.doi.org/10.1053/j.gastro.2011.11.037)Medline abstract(Free)


たとえば、現代人は、そこに細菌がいれば、ヒトの体は炎症を起こすって思っている。炎症は“細菌の側”によるものだって。。。。でも、違うんだよねぇ。

炎症って、ヒトの側が細菌を排除する為に起こす生理現象なワケぇ。だって、細菌は炎症を鎮める物質、作ってるんだよぉ~。

炎症が起きないようにしたほうが、細菌にとっては、「オッケェ~」な環境なんだよねぇ。だから、ヒトが“抗炎症剤”なんか飲んじゃうと、“細菌の思う壺”なんじゃないかなぁ!

医学:細菌による宿主免疫の抑制

Nature 483, 7391 (Mar 2012)

細菌の侵入に対して宿主が起こす炎症反応は、自然免疫防御の重要な機序となっており、また病原体にとっては抑制すべき明らかな標的である。

細菌のこうした抑制機構の1つが今回報告された。

フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)は感染時に多数の病原性因子を宿主細胞へ移動させる。

このようなタンパク質の1つであるIII型エフェクターOspIはグルタミンデアミダーゼで、UBC13を特異的に修飾することでTRAF6-NF-κB炎症性シグナル伝達を阻害して、宿主の急性炎症反応を抑制する。

Letters to Nature p.623


ヒトに、ホントに悪さする細菌は、炎症を起こして排除しなくっちゃいけないんだけどぉ、過剰に炎症が起こっちゃったんじゃ、良くないじゃない?

だから、ホドホドのところで、炎症と抗炎症がパランスとれれば、結果オーライ。っていうか、人間の体って、基本的には、結果オーライでオメオスタシスなんだよねぇ。だって、進化の結果だもん。抗炎症には、こんな“細菌の力”も借りてるんだよね!きっと。

みんな、わかったかなぁ?むやみに細菌を殺しちゃいけない事。


・・・・・あぁ~、なんか、疲れるな、こういう口調。。。(ちょっと、ローラを意識してみました。最近、ローラが気になってしかたありません。ローラ、手元に置いておきたいです。西城秀樹のローラじゃないぞ)

というわけで、今回は“ウジ療法”に匹敵するインパクトを持った治療法をネタにしてみました。“ウジ療法”はYouTube で『マゴットセラピー』って検索するといいかもです。(もしくは、こちら


と、こんな事を書いていたら、ふいに芥川龍之介の“薮の中”を思い出した。(青空文庫でよめるので、興味のある方はこちら

これって、一つの事件を、いろんな人の証言?で“表現”していて(相互に矛盾しちゃって)、、、、それだけで終わってるんだよね。小説では、普通、犯人の視点で事件が克明に記されるか、あるいは名探偵が最後に謎を解明かし、事件の全貌が読者にわかるしかけになっているんだけど、“薮の中”では、それがない。

でも、現実の社会では、名探偵はいない。

そして、面白い事に、一つの事象に、多数の解釈が付く。現代人は、その解釈の事を“真実”と呼ぶ場合が多い。

人が人を殺す。。。この事象は唯一つ。しかし、その背景は様々。いわゆる動機ってヤツ。この動機により、罪の重さは変化し、刑罰に差が付く。そんなことは、誰でも知っているんだけど、人は自分の見たいものを見、自分の納得のいく解釈をしたがるから、「俺の“見方”“解釈”が真実だ」ってなっちゃう。


ここまで書けば、感の良いみなさんはピンと来ると思うけど、医療とはまさにコレ。

生物学的な現象は一つでも、その解釈は人によってそれぞれ。偉い学者さんや権威筋が「コレコレこうである」と言っちゃったりすると、、、、、。

そこに形成されるコンセンサスが、いわゆる“真実”と呼ばれることになるんだろう。「俺は、あの先生が言ってる事が正しいと思うよ。だから、それが真実なんだよ」って。生命現象に個人差があるわけだから、たまたま経験が合致しちゃったりしたら、そりゃ、真実だって思うよね。

こんな話は、何も細菌だけに限らず、コレステロールにしたって同じ事。

偉い学者さんや権威筋の人たちは、小説“薮の中”の木樵だったり、旅法師、放免、媼、多襄丸の白状、清水寺に来れる女の懺悔、巫女の口を借りたる死霊の物語だったりするわけだよ。

おもしろいね。


話は変わるけど、世の中には、こういうことを理解していない人たちが、少なからずいるのも事実。

20120403_mbtiどこで拾ったんだか、忘れちゃったけど、確か「チーム医療がどうたらこうたら」で、「だから、そいうい“個性”をチームで役に立つ人材にするには、これを知っとく必要があるよ」みたいな話のなかで使われた図がコレ。

この図の、心の働き(1)[感覚機能]のところに書いてあるタイプ、「・・・・事実は一つと思う」っていうひと、いるよねぇ。医療のほかでも、歴史小説とか読んで、大東亜戦争の意味とか考えちゃうタイプ。。。。そして、真実はコレである、、とか言っちゃうタイプ。

いや、ただ、それだけなんだけどね。

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March 28, 2012

MRSA肺炎に対しlinezolidはvancomycinに勝る? 『女か虎か?』

20120328_woman_or_tiger『女か虎か』という短編ミステリーをご存知だろうか? 1882年に発表されたから、いわゆる古典ってヤツなのだが、、、、

こんな古いんだから、あらすじを書いてしまっても、「問題にはならんだろう?」ってことで、ちょっと書いちゃうけど、、、、

このミステリーの舞台は、とある未開の地の王国。王様の権力は絶対で絶大。この国には“王の闘技場”なるものが存在し、普段は遊技場、なにかしらのトラブルが発生したときには、裁判所みたいな機能をする。

--- 映画、グラデュエーターの闘技場を思い出してもらえれば、当たらずとも遠からず? ---

で、トラブルの当事者は、その闘技場に引っ張り出される。そこには二つの扉があり、その一つには飢えた虎が、もう一つには美女がはべっている。王様と民衆が見守る中、被告人は、どちらかの扉を選択しなければならない。

女が出るか虎が出るか?彼に知る由はない。王様も知らない。もちろん、民衆も知らない。すべては神のみぞ知る。

この王国では、この白洲を乗り切れば、全てのトラブルは不問に付され、美女を選択できれば、それ以降、生涯、その美女と添い遂げられる仕組みになっている。もちろん、それ以前に彼に妻がいようと、恋人がいようと、よりを戻すことは許されず、その美女と生涯を供にしなければならない。

いわゆる過去を一切捨て去り“生まれ変わる”事を強要されるのだ。

そういう状況設定の中で、、、、、

ある一人の青年が、王女と恋をした。相思相愛ではあったが、青年の身分は低く、とてもつりあう間柄ではない。

ある時、二人の恋が王に知れ、青年は“王の闘技場”に立たされることになる。もちろん、王女も見守る中で、究極の選択を強いられる・・・・。

しかし、王女は、青年が闘技場に立たされるよりも前に、あらん限りの手を尽くし、どちらの扉に虎がいるのかを突き止めていた。

青年は、王女なら自分のために、この情報を得ることを確信していた。

そして、、、闘技場に立った青年は、王女に力強い視線を投げかける。王女もそれに答えて、恋人にだけわかる仕草で、右の扉を示した。

青年は、それを信じて、右の扉の前に立つ。。。。。


このミステリーでは、結末は書かれていない。

ただ、王女は、悩んでいた。恋人が虎に食われてしまうことには耐えられない、でも自分よりもずっと美しい処女が彼の元に寄り添うのもまた耐えられない。王女は悩んだ末に結論を出し、若者に右の扉を示す。王女が示した扉は果たして? - 『女か虎か?』と。


さて、今回のタイトルは、「MRSA肺炎に対しlinezolidはvancomycinに勝る」だ。【Journal Watch Online日本語版】より転載。

今回は、まず、Linezolid が高額であることを知って、驚いた。(linezolidの価格はvancomycinの10倍超)と書いてある。びっくりしたので、薬価本を開いて確認してしまった。10倍ではなかったが、linezolid = ザイボックス錠600mg は1錠、約13,000円。一日2回飲むから、一日26,000円の計算。注射もあるけど、一日の値段は似たようなもの。

いやー、それでも、「MRSA肺炎に対しlinezolidはvancomycinに勝る」ってんなら、それも仕方ないのかなぁ・・・・って、じっくり読み進んだら、、、、、

No. 12-0313-03
MRSA肺炎に対しlinezolidはvancomycinに勝る
Linezolid Bests Vancomycin for MRSA Pneumonia
2012 March 13

vancomycinは、その毒性と複雑な薬物動態にもかかわらず、すべてのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)感染に対し、これまで頼りにされてきた薬物である。いくつかの研究では、linezolidはvancomycinと同等または同等以上に有効であったが、そのような研究では、概して、vancomycinの血中濃度に基づく至適な投与が行われていなかった。

最近、linezolidの製薬企業が支援した多施設ランダム化二重盲検試験において、MRSA肺炎を有する成人の治療について、これら2つの薬物が比較された。それぞれの試験実施施設において、盲検化されなかった薬剤師が、トラフ値にしたがってvancomycinの投与量を調節した。

投与終了から7~30日後に臨床治癒が達成されたのは、linezolid投与群の58%(165人中95人)、vancomycin投与群の47%(174人中81人)であり、有意差が認められた(P=0.04)。linezolid投与群は、投与中および投与後ともに、MRSAが根絶される割合が高かった。有害事象および治療を制限する事象の発生頻度は、両群で同様であった。腎不全がvancomycin群でより多くみられたのに対し、linezolidに特徴的な問題である血液毒性の発生率は、両群で同等であった。これらの観察結果にもかかわらず、60日間の全死因死亡率は両群で同等であった。

コメント:この研究から、MRSA肺炎の治療において、linezolidはvancomycinと同等またはそれ以上であること、およびlinezolidの平凡な成績が確認された。エディトリアル執筆者は、この研究の方法論を賞賛し、linezolidがvancomycinを上回るいくらかの利点を有するかもしれないと認めている。しかし、費用を考慮すべきであること(linezolidの価格はvancomycinの10倍超)と、生態学上の懸念があること、すなわちlinezolid耐性のMRSAがすでに報告されている(JAMA 2010; 303:2260:http://dx.doi.org/10.1001/jama.2010.757)ことも、われわれに思い起こさせている。

— Abigail Zuger, MD

Published in Journal Watch General Medicine March 13, 2012

CITATION(S):

Wunderink RG et al. Linezolid in methicillin-resistantStaphylococcus aureusnosocomial pneumonia: A randomized, controlled study.Clin Infect Dis 2012 Mar 1; 54:621. (http://dx.doi.org/10.1093/cid/cir895)
Original article(Subscription may be required)
Medline abstract(Free)

Torres A. Antibiotic treatment against methicillin-resistantStaphylococcus aureushospital- and ventilator-acquired pneumonia: A step forward but the battle continues.Clin Infect Dis 2012 Mar 1; 54:630. (http://dx.doi.org/10.1093/cid/cir907)
Original article(Subscription may be required)
Medline abstract(Free)


ななななななな、なんとぉ、、、、『これらの観察結果にもかかわらず、60日間の全死因死亡率は両群で同等であった』って書いてある。

おいおい、これって、大どんでん返しっていう意味じゃ、完璧にミステリーじゃないのぉぉぉ!!


昨日は、「エピネフリンが最終的には意味が無い」ってエビデンスを取り上げた。

そして、医学的には意味は無くとも、社会学的には意味はあるとも書いた。

今回は、投与終了から7~30日後に臨床治癒が達成され、効果は linezolid が勝った・・・・・・しかし、60日間の全死因死亡率は両群で同等であった・・・と。

この結果に、10倍じゃなくって、日本じゃ約4倍高いザイボックスを使うことに、社会学的な意味があるという自信が、揺らいでしまった。


と、真面目ぶってもしょうがないので、、、今回は、この論文著者の、小説家としての資質を考えてみた(なんだソレ?)。

要するに、この「しかし、60日間の全死因死亡率は両群で同等であった」って部分の持っていき方ですね、肝は。


今回のような「MRSA肺炎に対する linezolid と vancomycin の効果の比較」みたい場合、最後に、この“落ち”を持ってきたあたりは、かなり、いけてると思います。


『女か虎か?』のように、物語中に示された謎に明確な答えを与えないまま終了することを主題としたストーリーのこと、リドル・ストーリー(riddle story)というのだそうだ。

「MRSA肺炎に対する・・・・」でも、60日間の死亡率なんて、示さないことも出来たはずだし、今後の検討課題とすることもできたはずだ。

他の論文でも、「今後の検討課題である・・・」みたいに、リドル・ストーリーになっているものはある。しかし、それは、結論は延長線上のようなものだよと、読者を“誘導”する“余韻”を感じさせるものばかりだ。

で、結局、そのとおりの結果だとして、面白くもなんとも無い。

「そんなこと、予想できた事だろ?」みたいに。


でも、予想(期待)を裏切る結果を示されると、俄然、読み手にも力が入る。

そして、敢えて、こうすることで、少なくとも、MRSA肺炎に対しては、linezolid はイイですよって印象付けられる。全死因なんだから、linezolid とは関係ないぜ!みたいな印象も含めて。。。。

そんな、薮にらみに走ってしまった、今日この頃でした。


逆に、最初に思わぬ結果が得られたレポートでは、リドル・ストーリーにした方が、いいのかも。どうなるのか、ワクワク、ドキドキ・・・・って?

次の一報「不眠症治療薬が死亡率の上昇と関連」では、どうだろう?

No. 12-0313-01
不眠症治療薬が死亡率の上昇と関連
Insomnia Drugs Linked to Increased Mortality
2012 March 13

多くの成人が不眠に対して催眠薬を服用するが、催眠薬は癌および死亡のリスク上昇と関連があるとされている。研究者らは、催眠薬の処方を受けた10,531人の症例患者(平均年齢54歳)の医療記録と、催眠薬の処方を受けていないマッチされた23,674人の対照群の医療記録を解析することにより、これらのリスクの程度を明らかにした。死亡に関するデータは、Social Security Death Indexを用いて取得した。

平均で2.5年間のフォローアップの後、催眠薬の処方を受けた患者の6.1%、処方を受けなかった患者の1.2%が死亡していた。複数の変数(例:年齢、喫煙状況、体格指数[body mass index:BMI]など)で補正し、複数の併存疾患によって層別化したところ、非使用者と比較した全死因死亡のハザード比(hazard ratio:HR)は、年間1~18回分の処方を受けた患者で3.6、年間18~132回分の処方を受けた患者で4.4、年間132回分を超える処方を受けた患者で5.3であり、用量反応関係がみられた。解析をもっとも一般的に処方される催眠薬のzolpidemまたはtemazepamに限定しても、結果は同様であった。あらゆる催眠薬で年間132回分を超える処方を受けた患者は、癌のリスクも有意に上昇した(非使用者と比較したHR 1.4)。

コメント:今回の研究において、催眠薬の処方を受けると、年間18回分以下の場合でも、全死因死亡リスクが上昇し、頻回の処方を受けると(年間132回分超)、癌のリスクが上昇した。研究のデザインを考慮すると、今回の研究は、催眠薬が死亡や癌を引き起こすという証明にはならない。また、著者らは、うつ病、不安などの精神科的診断をコントロールすることができなかったため、交絡因子が残っていた可能性がある。とはいえ、一般的に処方されるこれら薬物の安全性について、著者らは適切にも疑問を投げかけている。

— Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP

Published in Journal Watch General Medicine March 13, 2012

CITATION(S):

Kripke DF et al. Hypnotics' association with mortality or cancer: A matched cohort study.BMJ Open 2012 Feb 27; 2:e000850. (http://dx.doi.org/10.1136/bmjopen-2012-000850)
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ちなみに『女か虎か?』、私は、王女には虎の扉を指し示して欲しい・・・・・。
(^o^)/

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March 27, 2012

日本発のエビデンス、院外心停止例のエピネフリン投与に疑問符

20120327_cetpショッキングな結果だったんだけど、でも、よく考えてみると、当たり前のことかも。

わかりやすくいうと、心停止に陥ったときに、すでに、その人の予後(運命)は決定されている。薬はその運命を変えることは出来ないってこと。

エピネフリンで無理やり心臓を動かしても、予後は心停止していた時間(気温などの環境要因はあれど)に依存する。一時は、運命に抗い、自発循環が見られるけれど、その意味は無い(心臓以外は運命に従って経過を辿る)。

CPRから1カ月時点の生存率はエピネフリン群が良いんだけれど、それはエピネフリン投与が無ければ死んでいた人(運命に従って経過を辿った人)が入っているからで、神経学的予後良好、全身予後良好の生存率は下がるのは、エピネフリンの毒性とは関係ないんじゃないのか?ってこと。

著者らは、エピネフリンの毒性を指摘しているけど、この気持ちはわかる。医療行為そのものが無意味であるとの結論は出しづらいからね。

私なら、「心停止して、○○分以上経過したら、あとは運を天に任せるより他はない。積極的な行為に意味は無い」としたいけどね。


ただし、いつも言うように、医療は社会学だから、医学的な意味は無くても、その行為は家族にとっては“必要”である。これは間違いない。宗教の無い日本には、死を受け入れるプロセスに医療が必要なのである。。。。

と、常々、私は思っている(医療費の観点からは、疼痛管理を含めた介護が医療に代われば良いと思っている)。

41万7,188例対象の前向き観察研究

 九州大学大学院教授の萩原明人氏らは、41万7,188例の院外心停止例に関する前向き観察研究の結果をJAMA(2012; 307: 1161-1168)に報告した。それによると、病院到着前に救急救命士によるエピネフリン(アドレナリン)投与を受けた場合、非投与の場合に比べ、自発循環の再開との有意な関連があった一方、1カ月後の予後良好生存率とは有意な負の相関が認められたという。日本では2005年から救急救命士によるエピネフリン投与が可能になっており、実施件数も最近急増している。

■ propensity score解析を実施

 心肺蘇生(CPR)例へのエピネフリン使用についてはポジティブ、ネガティブなデータの両方が存在し、一貫した見解は得られていないと萩原氏ら。今回、同氏らは非ランダム化デザインの前向き観察研究およびpropensity scoreマッチングを用いた検討で院外心停止のCPRにおける有効性を検討した。

 ウツタイン様式に基づく全国の院外心停止例登録システムを利用して、2005~08年の院外心停止例41万7,188例が解析された。

■ エピネフリン群の予後良好生存率は1.4%、非投与群では2.2%

 病院到着前の自発循環再開率は、エピネフリン投与群で1万5,030例中2,786例(18.5%)と、非投与群の40万2,158例中2万3,042例(5.7%)に比べ有意に高かった(P<0.001)。propensity score法によりエピネフリン群、非投与群の各1万3,041例をマッチングして行った解析でも、エピネフリン群における自発循環再開率は有意に高いことが確認された〔エピネフリン群 vs. 非投与群、2,446例(18.3%)vs. 1,400例(10.5%)、P<0.001〕。

 CPRから1カ月時点の(1)生存率、(2)神経学的予後良好(Cerebral Performance Category 1または2)での生存率、(3)全身予後良好(Overall Performance Category 1または2)での生存率が得られた人の割合は次の通り。

(1)エピネフリン群805例(5.4%)、非投与群1万8,906例(4.7%)

(2)エピネフリン群205例(1.4%)、非投与群8,903例(2.2%)

(3)エピネフリン群211例(1.4%)、非投与群8,831例(2.2%)

 生存率はエピネフリン群で有意に高かったものの、神経学的予後および全身機能の予後良好による生存率ではエピネフリン群が非投与群を有意に下回っていた(いずれもP<0.001)。propensity score法による解析でも、同様に有意な傾向が確認された。

■ 自発循環回復のORは2.5倍も、生存率の補正後ORは0.46倍

 病院到着前のエピネフリン投与と同到着前の自発循環回復に有意な正相関が認められた〔補正後オッズ比(AOR)2.36、95%CI 2.22~2.50、P<0.001;propensity scoreによる解析後のAOR 2.51、2.24~2.80、P<0.001〕。

 一方、病院到着前のエピネフリン投与と院外心停止後1カ月時点の生存率に関する補正前のORは1.15(95%CI 1.07~1.23)であったが、各種関連因子を補正※したモデルによるAORは0.46(同0.42~0.51)となった。また、各種予後良好生存率のAOR〔(2)のAOR 0.31(同0.26~0.36)、(3)のAOR 0.32(同0.27~0.38)、いずれもP<0.001〕も有意な低下を示した。propensity scoreによる解析でも、同様に有意な負の相関が確認された。

■ 付随論評「心停止例に対するエピネフリン使用の正当性熟慮を」

 萩原氏らは、院外心停止例に対する病院到着前のエピネフリン投与は到着前の自発循環再開の頻度増加に有意に関連していたが、発症1カ月後の生存率や機能予後良好には結び付いていなかったと結論。

 エピネフリン群の生存者5.4%のうち、神経学的予後が良好であった人の割合がわずか1.4%であった点について、同氏らは心筋障害の増加、心停止後の脳微小循環阻害や心室性不整脈といった同薬の負の作用が関連していることが裏付けられたとの見方を示した。その上で、今後は院内心停止例を対象とした検討が必要としている。

 同氏らの研究結果に対し、米ピッツバーグ大学のClufton W. Callaway氏は付随論評で、この領域では今までにない規模で、かつ可能な限りベストな手法を用いた観察研究と評価。同試験を上回るデザインの試験結果が出るまでは、医療関係者が心停止例に対するエピネフリン使用の継続に正当性があるかどうか熟慮を重ねるべきと指摘している。


先日、塩野義製薬のサインバルタカプセルの商品説明を受けた(3月は多いねぇ。メーカーさんも消化試合だから。。。説明会もほぼ週2回ペースだったから、リッチなお昼ご飯で私の栄養状態は完璧です・・・・)。

その中で、「60疾患の薬剤貢献度治療満足度の相関」ってのがあって、みんな「うんうん、頷けるぅ~」と好評だった資料があって、社内用だったらしいんだけど、コッソリ、印刷してもらった。

薬剤貢献度はy軸、90%を超えているのは消化性潰瘍、、、やっぱりねぇ、そりゃそうだ。軒並み低空飛行なのは“がん”。これも当たり前。アルツハイマーは10%を切っている。これも当たり前だのクラッカーだね。

面白いのは、x軸が治療満足度なんだけど、コレ、聞いたところ、医師の満足度なんだって。

で、私は思ったわけです。

このグラフ、60疾患だから、60のドットが Plot してある。このドットをそのまま、患者の治療満足度にアニメーション移動させたら面白いんじゃないかって。

こういうのって、確か、Microsoft PowerPoint で出来たはず。。。。

まぁ、この調査自体、「どうやったんだよ?」って感じなんだけど、ネタとしては面白いんじゃないかなぁ。。。。


んで、心肺停止状態でエピネフリンの効果を云々すると、、、、最低ラインで墜落なのは必至。

でも、エピネフリンの効果は、「自発循環の再開」が主たる目的だとすれば、これは、薬剤貢献度は高いわけです。エピネフリンの効果を1ヵ月後の、、、、にするから、「0」になってしまうワケで。。。。


「60疾患の薬剤貢献度治療満足度の相関」では、高血圧や脂質異常症も貢献度は80%以上と高いところにランクインしてるんだけど、予後まで見ると、スタチン系でも恩恵を受ける人は、絶対リスク軽減効果は1%なんだから、100人に1人なわけで、、、、貢献度は、本当は低いと言わざるを得ない。

血圧を下げたり、コレステロールを下げることは、エピネフリンにとっての「自発循環の再開」に相当するわけだからね。

これじゃ、エピネフリンがかわいそう・・・・・ってもんです。

でも、見かけの数値が是正されるというのは、社会学的には必要なこと、、、、。これも、現実社会に暮らしている時の私の持論です。

だけど、医療従事者のなかにも、「コレステロールを下げると、心筋梗塞にならない」って本気で思っている人がいるのも事実?

これらを加味して、「疾患の薬剤貢献度治療満足度の相関」を医療従事者と患者の間でアニメーションさせてみる。

さてさて、どんな“動き”をするのか、興味は尽きない。


ところで、近々、日本は原発稼動ゼロになるらしい。そして、原発ゼロを心から希求している人たちもいる。

私は、いつも疑問に思っていたのだが、どうして、この人たちは、“車”廃止を訴えないのだろう?

年間6000人近くも、車の事故で死んでいる。その様な“危険な存在”の廃絶をどうして求めないのだろう??

原発の事故で、一体、今まで、何人の人が死んだのだろう?

原発は、車の事故より、はるかに少ないのではないだろうか?それなのに、何故、そんなに“危険”な存在としたいのだろうか?原発を。


でも、考えたら、一人の人間の中で“危険度”の価値判断が“あいまい”なのと同じく、疾患治療の薬剤貢献度の価値判断も、そうとう“あいまい”であることは、間違いない。


p.s.上の絵は、ここからの拝借。んで、CETP 阻害薬の意味の無さがよくわかる。っていうか、どうして CETP の“P”を“酵素”って訳しちゃったんだろう?日本人。CETP って、たんなる“トンネル”の効果だよね、そう、トンネルたんぱく質。

これからわかることは、“HDL-コレステロール”をバスに喩えると、乗客の少ないバスが多くないと「意味が無い」ってことだ。乗客はもちろん、コレステロール。

だから、乗客満員のバスを増やしても、害しかないワケ>CETP 阻害薬

で、現在、“乗客の少ないバス”を調べる方法は無い。。。。。。。スタチン系で“HDL-コレステロール”を増やしても、HDL-バスの乗客の人数は、わからない。。。。。。

スタチン系の真の薬剤貢献度の高い人は、コレステロールの生合成が減ると、乗客の少ないバスが増える体質の人なんだろうね。当然、コレだけで言える話じゃないけど。

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December 28, 2011

sipuleucel-T 療法を叩き台に“本音”トークしようぜ!

20111228_sipuleucel_t今回は“sipuleucel-T療法”をネタにして、“よき人”たちの“いい子ちゃん発言”にゆるぅ~く、関節技を極めたいと思う次第である。

えぇ~、まず、“sipuleucel-T療法”だけど、簡単に言うと、前立腺がんの治療法の一つである。前立腺がん患者から樹状細胞をとり、2日間の培養時に前立腺のacid phosphatase (PAP)抗原を添加し、患者自身に戻すという“免疫療法”のことだ。

FDA が認可したこの治療により、4ヶ月の延命が可能だということだ。その詳細な最新のPhase III治験"IMPACT"の結果は、ココ をご覧下され。


で、今回、ネタにしたいのは、その治療費の話。1コースで9万3千ドル(日本円で約744万円)だとさ。

日本で、前立腺がんで死ぬ人が、全て、この治療を受けて、4ヶ月の延命をしたとする。2010年は、約1万人の方が前立腺がんで亡くなったそうだ。この治療の適応がどうのこうのと、、だから、全員がこの治療を受けるわけじゃないとかの細かい話は抜きにして、ざっと、700億円が懸かる計算になる。

そのような高額な治療は、なにも、前立腺がんの専売特許じゃなくって、メラノーマに対する抗体医薬イピリムマブなどは、1コース分(3週間に1回、計4回投与)で12万ドル(日本円で約960万円)もする。他にも、高額な“抗がん療法”は存在するし。


さて、ここで、取り上げたいのが、混合診療。

混合診療を反対する人たちの“言い分”が、「貧富の差により、高度医療を受ける機会が失われるのは、許しがたい」と。

そして、この後は、少し声が小さくなって「全額、保険でカバー出来るのが一番・・・・」と。
 
 
さて、現在、日本で混合診療が出来ると仮定して、700万だ、900万だとお金をかけて4ヶ月の延命をした人がいたとして、お金がなくって、この治療が出来なかった人が、出来た人を『羨ましい』『お金持ちだけズルイ』とか感じるだろうか??


---私は、感じないけど---


市民団体なども「所得格差が医療格差に繋がるのはケシカラン」と言うけど、どのような疾患と治療法を想定しているのか、はっきりと言っている団体はない。誰に頼まれたのか知らないけれど、イメージ戦略みたいな事を、行っているようにみえる。

一体、誰が、こんなイメージ戦略を・・・・・。


今年、最後に驚いたのは、Nature 480, 7378 (Dec 2011) に掲載された記事。

以下、引用。

Nature 480, 7378 (Dec 2011)

Highlights: 医学:がんの能動的免疫療法の成功

モノクローナル抗体やドナーT細胞を使う受動的免疫療法は一部のがんに有効だが、特異的で持続的な抗腫瘍免疫の能動的活性化については、広範な研究が行われているにもかかわらず、なかなか成果が上がっていない。

しかし最近になって、前立腺がんに対する自家細胞免疫療法であるsipuleucel-T療法と転移性黒色腫の一部に対する抗がん剤イピリムマブが開発され、この2つの成功は、がん免疫療法に対する関心を復活させることになった。

今週号の総説は、ワクチン、T細胞免疫修飾因子などの能動的免疫刺激因子についての最近の研究を総括したもので、これらは分子標的治療とともに、今後数年内にがんの治療法につながると考えられる。

Review Article p.480


私は、個人的に“免疫学”が大好きで、継続して“勉強”していることもあり、このようなニュースには、学術的に大変興味がある。私が、この業界で仕事を続けていくモチベーションとも言ってよい、知的好奇心を満たしてくれる“成果”が、分子生物学とともに、この分野には溢れているからだ。

しかし、現実の“問題点”として、医療経済的な問題は、避けて通れない。

医療の業界には、いわゆる“隠れ蓑”が多くある。「人の命にはかえられない」ってヤツだ。最後に“一言”口に出せば、正義の味方になれる。言った者勝ち。

そういう意味で、この Nature 480, 7378 (Dec 2011) の記事は、『これらは分子標的治療とともに、今後数年内にがんの治療法につながると考えられる』としてるんだけど、お金には、言及していない。そして、「お金の問題じゃないだろ?人の命が懸かってるんだから」って、暗に言っているようで、“ズルイ”って感じちゃったのだ。(っていうか、医薬品を開発する側になれなかった、やっかみかも。そっちの人間になりたかったから)


ところで、引用中の“イピリムマブ Ipilimumab”だけど、どんなモノかというと、、、

似たようなモノに、トレメリムマブ Tremelimumab ってのもあり、いずれもCTLA-4の阻害作用のある完全ヒト型モノクローナル抗体薬である。

副作用(有害反応)を知る為にも、、、、

---これを知ると、お金持ちを羨ましく感じなくなりそうだから---

これが作用する仕組みを、簡単に紹介しておく。

・免疫応答において、T細胞活性化にはTCR・CD3複合体を介する抗原特異的なシグナルによる刺激と、インテグリンを介する抗原非特異的なシグナルによる共刺激(副刺激)が必要である。

・この共刺激というのが、T細胞表面のCD28と、単球・マクロファージ(抗原提示細胞)表面に発現されるB7(CD80)との結合のことである。

・この二つの刺激によりT細胞は活性化され。

・一方、活性化されたT細胞の表面には、CD152(CTLA-4)が発現され、単球・マクロファージ表面のB7と結合すると、T細胞の活性化は抑制される。

・すなわち、免疫応答においてCD152(CTLA-4)は、T細胞の活性化を抑制する負のシグナルを伝達する分子である。

・B7にはB7-1(CD80)、B7-2(CD86)が区別され、CD152(CTLA-4)の関与するインテグリン/抗原提示細胞のリガンドの相互作用にはCD152(CTLA-4)/CD80と、CD152(CTLA-4)/CD86とがある。


がん細胞を殺傷する目的にはT細胞の活性化が必要であり、その目的には活性化を抑制するCD152(CTLA-4)を阻害することは理に適っていることになるわけだ。

だから、免疫応答を収束させる鍵穴として働く CTLA-4 に結合して、B7 の働きを阻害することにより、活性化T細胞の作用が延長し、抗腫瘍免疫が高まる。。。と。


まぁ、ここまでなら、「いい事だらけジャン」って感じるかもしれないけど、この“仕組み”は、時間軸区に沿って免疫応答を終わらせる働きや、過剰な“免疫応答=炎症反応”を抑制する働きをも担っているわけで。

免疫力は、高ければ高いほど良いわけじゃないのは、この生理現象(生命現象)を人間に都合が良い面から“免疫”と呼び、都合の悪い面を“アレルギー、アナフィラキシー”などと呼んでいることからもわかることだと思う。

同じ現象なので、都合のよい面だけを“増幅”するわけにはいかず、悪い面も“助長”される。

ようするに、、非特異的に、免疫力をあげる結果、自己免疫疾患が発症したり、免疫が関与する炎症反応が酷くなるす・・・ってこと。

また、CTLA-4の作用を修飾する薬剤としては、CTLA-4を阻害するのではなく、逆に刺激するアバタセプトなどもある。

刺激するのだから、免疫は抑制される。アレルギーや免疫機序による炎症性疾患(関節リウマチなどなど)に効くわけだが、逆に、がんに対する免疫機構は弱くなるわけだ。

アバタセプトは完全ヒト型可溶性融合蛋白であり、T細胞活性化に必要なCD80およびCD86 リガンドにCTLA-4類似体として高親和性をもって結合し、CD80やCD86によるT細胞活性化作用を抑える作用をする。


以上は、想定される副作用(有害反応)を知る上での基礎知識ってわけだが、実際(臨床試験)いは、副作用としては下痢と発疹が見られたそうだ。

確かに、他の抗がん剤と比べれば、臨床的な副作用は少ないだろうけど・・・・高っ!


さて、興味のない人には、つまらない話を続けてもしょうがないので、最後に、“毒”が役に立つ話でもして、終わりにしようと思う。


あっ、“本音”トークに関しては、私は、混合診療は大賛成。700万円、900万円を自腹を切って、延命する人たちは、どうぞ、やってください。決して、羨ましがったり、妬んだり、「金持ちが、高度な医療を受けられるのはケシカラン」なんて、心底、思いませんから。

だから、“平等”な保険料は勘弁してくださいっ!!!(ここが一番大事。使った分だけ翌年の保険料は上げて欲しいのだ。消費税あげるなんて、もってのほかだよ)


で、毒が役に立つのは、放射線の話のところでも、さんざん、したんだけど、、、、これも、「現代医学でわかっていることなんて、ほんの少しなんだから、寿命や病気は運命だと思っ受け入れなさい」ってことに通じるのかなぁ・・・。医療は、その人が、納得して満足出来ればOKであって、他人の“結果”と比べて、悩むのは、、、つまんないよ!と。

免疫のために正しく食べる(Eating Right for Immunity)

Science December 16 2011, Vol.334

環境要因は免疫組織の発生を方向づけるとともに、免疫応答も制御する。

Kiss たち(p. 1561, および、10月27日号電子版を参照)は、アリール炭化水素受容体(AhR:芳香族炭化水素受容体)の天然リガンドが、リンパ濾胞と呼ばれる腸の特定化した免疫構造の生後発達と、腸内細菌のシトロバクター(Citrobacter rodentium)に対する防御的応答に重要であることを示した。

食事の中のAhRリガンドは生得的リンパ球プールのサイズを制御しており、AhRリガンドを欠いた食事を与えられたマウスは、腸のリンパ濾胞の発達に障害を持つ。

Natural Aryl Hydrocarbon Receptor Ligands Control Organogenesis of Intestinal Lymphoid Follicles


ようするに、免疫を都合よく働かせるためには、食事が大事って話なんだけど、、、、有害物は拒絶・・・なんてことをしていると、結果は逆で、免疫は弱るかも・・・って話(例によって深読み=薮にらみモード)。

まったの話、AhRのリガンドっていえば、環境ホルモンとして知られるダイオキシン類なんかも、該当するんだからね。まっ、ダイオキシンは代謝を受けにくく体内に蓄積する性質があるから、過剰なタンパク質産生を引き起こすことで、毒性を発現しちゃうらしいけど。

その他の AhRのリガンドで怖いのは、テトラクロロジベンゾジオキシンポリ塩化ビフェニル、ベンゾピレンなんかもあるよ!


まっ、このように「善かれ」とおもってした行為が、逆に悪かったなんてのは、よくあることで、、、どんなに健康的な生活を送ってても“がん”になる時ゃなるし、、、浅知恵で思い悩むより、健康には“能天気が一番”ってことかな?

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December 26, 2011

減量には、非商業的プログラムより商業的プログラムのほうが効果的かつ安価である

20111226_dietこれは、非常に“ヤバイ”結果である。

何がヤバイって、、、クリニックや薬局での“高額”なダイエットカウンセリングより、より“安価”な民間の怪しげなダイエットプログラムの方が、より効果が高いってんだから、やばくないわきゃないでしょ?(“怪しげ”ってのは、我輩の下衆の勘ぐりなんだけどね)

で、論文には、その理由も書いてあるんだけど、要するに「豚もおだてりゃ木に登る」ってことみたいだ。

いや、こんな“酷い”表現はしてなくて、「週1回の講習会などのインセンティブを提供し、これが動機付けと行動の変化を継続させるため、効果が得られた」としている。

結局、理路整然と、理屈を並べ立てて、理解させ、実行させる・・・・みたいな、アドヒアランスを向上させる努力は、こと、ダイエットに関しては、効果が薄い・・・・。


もしかしたら、こりゃ、“禁煙プログラム”にもいえるんじゃないのかな?

禁煙だって、クリニックで「理路整然と、理屈を並べ立てて、理解させ、実行させる・・・・」みたいなことをやってるわけだけど、綺麗なおねえさんに、「禁煙成功したら、一回、デートしてあげる」みたいなインセンティブの方が、絶対、効きそうだ。

あっ!なにも、論文にある“商業的プログラム”で行う“週1回の講習会”が、綺麗なおねえさんによる“誘惑”だといってるわけじゃないんだけどね。でも、「痩せればモテますよ」とか言ってるんじゃないのかなぁ?そう、豚を煽てるのと一緒だよね。

No. 11-1215-01
For Losing Weight, Commercial Programs Are Better and Cheaper Than Noncommercial Programs
2011 December 15

非商業的減量プログラムと商業的減量プログラムを比較すると、どのような結果となるだろうか?英国の過体重または肥満の成人740人を組み入れ、8つの群に割り付けたランダム化試験では、以下の12週間にわたるさまざまなプログラムの相対的有効性が比較された:一般診療における1対1のカウンセリング、薬局での1対1のカウンセリング、グループでの食事療法プログラム、および3種類の商業的プログラム(Rosemary Conley、Slimming World、およびWeight Watchers)。もう1つのグループの参加者は、これらの6つのプログラムの中から選択できるようになっていた。対照群の各参加者は、フィットネスセンターの無料券12枚を支給された。

12週後、すべてのプログラムで体重の平均値が有意に減少した(一般診療による1.4kgからWeight Watchersによる4.4kgまでの範囲)。1年後、一般診療と薬局における1対1のカウンセリングを除くすべてのプログラムで、体重が有意に減少した(0.7~3.5kgの範囲)。しかし、1年後、体重の平均値が対照群に比べて有意に減少(2.5kg)したのは、Weight Watchers群のみであった。費用は、一般診療と薬局でのカウンセリングプログラムがもっとも高額であり、商業的プログラムがもっとも安価であった。

コメント:この試験では、商業的減量プログラムは非商業的減量プログラムより安価であり、効果的であった(Weight Watchersはとくに効果があった)。エディトリアル執筆者は、商業的プログラムは集中的な支援(週1回の講習会における「集団の力」など)とインセンティブを提供し、これが動機付けと行動の変化を継続させるため、効果が得られたと推測している。Weight Watchersがプライマリケア診療による減量に関するアドバイスより有効であったもう1つの試験の結果(日本語版Journal Watch Sep 22 2011)と、この試験の結果が同様であったことは、注目に値する。

— Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP

Published inJournal Watch General MedicineDecember 15, 2011

CITATION(S):

Jolly K et al. Comparison of range of commercial or primary care led weight reduction programmes with minimal intervention control for weight loss in obesity: Lighten Up randomised controlled trial.BMJ2011 Nov 3; 343:d6500. (http://dx.doi.org/10.1136/bmj.d6500)
Original article(Subscription may be required)
Medline abstract(Free)

Truby H and Bonham M. What makes a weight loss programme successful?BMJ2011 Nov 3; 343:d6629. (http://dx.doi.org/10.1136/bmj.d6629)
Original article(Subscription may be required)
Medline abstract(Free)


いつも、この時期、独断と偏見による“今年一番のトピックス”みたいなのを書いてるんだけど、これは、そういうのじゃないんだけど、結構、シビれた内容だよね。

でも、こういうのって、実は、よくあることだと思う。

なんたって、患者はいわゆる「B層」が多いからね。それに、こっち(医療提供側)にいる人間はアドヒアランスなんて言葉を編み出すくらいだから、全ての病人は、自分の病気に真面目に真摯に取り組むって思っているし、それが“良い事”だと思い込んでいる。

でも、違うんだよねぇ。もちろん、すぐさま生死に関わる疾患や低QOLの疾患なら、“大真面目”にもなるだろうけど、そうじゃない場合は、結構、温度差は激しい。

で、私は、どんな時にも、医療提供側の価値観が絶対善であって、患者を従わせようと躍起になり(そのくせ、患者主体のアドヒアランスなんて言葉を使いまわし)、そのことを仲間同士で褒め称えあっている“薬剤師”の存在に辟易しているわけで・・・・、こういうのが薬剤師には多くって、、、、(患者の予後とあんたの頑張りとは独立した事象である)、、、、、おっと、脱線・・・。

医療提供側にいるごく一部の「A層」によって躍らされる「B層」ともいえるこのような薬剤師も、また、自分たちが「B層」だとは認識していないワケで、、、、、(こういう構造、中世では“地獄”の恐ろしさを強調して、信じるものは救われるとしたんだけど、、、、似てる)

このようにして、社会はまわっている。。。んですねぇ。


で、結局、理屈じゃなくって、結果がよければ、すべてよしって所に行き着く。

だって、物質に質量がある理由もわかんないのに、アレコレ考えても・・・ねぇ。私には、ヒッグス粒子を持ち出して、理由を説明されても、チンプンカンプンですから。

というわけで、来年も、「深い関わりを欲する人には深く、浅くを望む人には浅く・・・・」を心がけて仕事することにします。(こういうことを全く理解していないで、“個別指導”と称し画一的な業務を押し付ける“B層の役人=支払い側”にも、一言、苦言を呈したいところなんだけど、まぁ、今日は忙しいから、いいや)

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