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March 15, 2013

抗生物質の作用機構の再検討(Antibiotic Mechanisms Revisited)

20130315_antibiotic_mechanisms_revi薬理学で“作用機序”を習うと、薬が100%効かないのが不思議に思えてくる。薬学部を卒業したての頃、よく、そんなことを思った。

今じゃ“作用機序”なんてものは、薬を使用した時に、誰にでも目に見える現象を都合よく説明できる、目に見えない数多くの現象の一つが、たまたま目に見えたものである・・・・と思っているから、『抗生物質の作用機構の再検討』なんてことに驚くことも無いのだが、、、、

薬が効かない理由に、こんな説明を用いれば、「科学的ではない」と患者さんに怒られてしまう。

もっとも、現代は医療に対するあまりにも過度な信頼が招いている“トラブル”が後を絶たないから、医療=医学が、「実は、こんなに不確実なものなのです」ということを“一般の人”に知ってもらう為にも、“一般紙”に取り上げてもらいたい“ニュース”なんだけどなぁ・・・・と思ったりして・・・・・


というわけで、Science March 8 2013, Vol.339 に掲載されているその内容を引用しておきます。

Science March 8 2013, Vol.339

最近の研究では、殺菌性抗生物質の細胞死滅機構として、活性酸素(reactive oxygen species;ROS)が関与する共通的な機構が示唆されていた。

2つのグループが多様な実験を用いてこの仮説を検証し、キノロン系抗生物質、ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド抗生物質では、酸素(あるいは硝酸塩)の有無に関わらず同レベルの殺菌効能があることが見出された。

Liuらは、抗生物質に晒された細胞中で過酸化水素が増えないことを観察し、抗生物質への暴露と、酵素中での鉄-硫黄クラスターの崩壊やDNAに対するヒドロキシラジカル損傷のような酸化的損傷に関して予想された症状との間には関連性がないことを見出した(p. 1210)。

同様に、Kerenらは、ヒドロキシフェニルフルオレセン色素の測定から推測されるROSの生成と細菌生存の間に相関がないことや、チオ尿素により作り出される顕著な保護効果が発現されないことを見出した(p. 1213)。

これらの結果は、ROSが介在する殺菌性抗生物質に対する従来の共通作用機構を支持していない。

Cell Death from Antibiotics Without the Involvement of Reactive Oxygen Species
Killing by Bactericidal Antibiotics Does Not Depend on Reactive Oxygen Species


“過度な信頼”が原因で起きた“事件”が、昨日の新聞(だったか?)に載ってた。たしか、内容は、こんな感じだ。。。

とある大学病院にて、、、、
のどの痛みを感じた人が診察を受けた。
医師は“舌がん”と診断した。
何故か手術を受けないまま、日々、経過し、、、、
その人は死んでしまった。
病院は、その人に入院、手術を勧めなかった、故に、その人は死んだ。だから、その咎で損害賠償して和解、、、、

たしか、こんな感じの内容だった。

テレビなどの影響だと思うけど、、、がんは早期に発見して手術し、その後、適切なケアをうければ、治る・・・・と思っている人がほとんどだと思う。でも、ホントのところ、、、、、ぶっちゃけた話、、、、、

ぜんぜん違う。早期だろうと後期だろうと、死ぬ人は死ぬし、助かる人は助かる。そりゃ、統計学的には、積極的に濃厚な治療をすれば、助かる人が、数パーセント増えるのかもしれないけど、ほとんど差は無い。数か月の延命は、3割くらいの人には約束されるかもしれないけど。(積極的な治療を受けるプロセスが、避けられない運命を受け入れる為に、本人にも家族にも必要なのだという話は、置いといて)


抗がん剤って、“作用機序”だけをみれば、「どうして、がんを治すことが出来ないのだろう?」って不思議に思うくらい、ロジックは科学的である。

なのに、この有様。

考えないわけにはいかない!

1.病気の原因は分かった!
2.だから、治療法も完璧!
3.薬の効き方も解明できた!
4.でも、病気は治らない!!!

どこかに、うその情報が入っている!!


20130315_objectionゲーム『逆転裁判』では、矛盾が生じるのは、どこかに“ウソ”の情報が入っているからだ。その“ウソ”に「異議あり!」と突っ込みを入れる。まさに、薬物治療にも言えそうである。

話は変わるが、先日、ある人から、こんな話を聞かされた。あるお医者さんにもらった薬を適当に飲んでたらこっぴどく怒られた。別のお医者さんじゃ、こんなこと無かったんだけど、なんで、同じような薬なのに、こんなに違うの?「ちゃんと飲め」って言ったり「適当でいいよ」みたいにさぁ??

その人は、20年来の“顔見知り”なので、ぶっちゃけた話が可能である。

「そりゃ、お医者さんによって違うのは当然ですよ。だって、治療方針とか信念とかが違うんですから」

「なに?それ、、信念??」

「いや、ぶっちゃけた話、薬の効果って、完璧を100%とした場合、自覚症状を緩和する薬は別として 1~30% 程度なんですよ。その30%を100%引き出すべきであるって考えてる人もいれば、完璧にやっても30%なんだから・・・って考える人もいる、いろいろいるのは不思議じゃないですよねぇ?」

「ふ~ん、そんなんだ。まぁ、薬の効果なんて、そんなもんだとは思ってたけどさぁ」


心の中じゃ、私は、「人生において、その人が遭遇するトラブルはいっぱいある。病気もその一つだ。そのトラブルの“その後”を30%も変更できる“手段”を、ホントはスゴイって思って欲しいんだけどなぁ・・・・・」と。


それにしても、先の“舌がん”の病院、どうしてお金払って和解したんだろう?

もしかして、、、、、腹黒い裏まで読んでしまう、私の悪い癖(藪にらみ)が杞憂であることを願って、筆をおこう。

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