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November 2012

November 30, 2012

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針は4年に一度の改定

20121130_don_quixoteさてさて、私の職場では、薬学部の学生実習を行っておりますが、これの“意義”については諸説あれど、国が決めたことですから、我々、現場で働く薬剤師の責務であると思っております(師の付く職業は徒弟制度で培われるとも言われてますし)。しかし、職場の環境によっては、「忙しくて、それどころではない」とか、色々ありまして、薬学生の指導は“強制的”に割り当てられるというものではありません。要するに、学生を受け入れるかどうかは、最終的には、現場の判断というわけです。

というわけで、私のところも、諸般の事情により、一期分“お暇”を頂くことになりました。

というわけで(といったら暇そうにしているおもわれるのも癪ですが)、来年の4月いっぱいまでは、比較的、思いつくままにブログを更新しようかと思っているわけです。


で、タイトルの「ゲノム倫理指針は4年に一度改定」ですが、今回は、2012年12月12日に開催される厚生労働科学技術審議会技術部会で改定案が提示されるようです。

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針って、何?って、俺たちになんか関係あんのか?って思われるでしょうが、かなりというか、スゲェ~関係あります。

“個の医療”という言葉を聞いたことがあると思いますが、基本的に人体には“個性”がありますから、薬の飲む量ひとつとってみても、オーダーメイドが理想なのはよくわかると思います。しかしながら、現状は、個性を無視した“古典的平均値”を用いた指標で、ものごとは進んでいきます(個の医療、ちょっとずつは進んでいます。例えば非小細胞肺癌患者におけるALK融合遺伝子の検査とか。これ日本人の場合、このタイプは、全肺がん患者の5%で、この5%の人たちのために作られた薬でもあり、それ以外のがん患者には使えません)。

では、何故、それが出来ないのか?

理由は簡単です。指標が無いからです。  じゃ、さっさと作ってくれ!!  ほいきた、がってん・・・・とは、行きません。この指標を作るためには、どうしても個人情報に触れなければならないからです。個人が特定できないようにしつつ、うまい具合に研究を進めるには、、、、、

健康で長生きできる為に働いているであろう遺伝子多型や組み合わせ(発現も含め)のパターンなら、漏れたって、大した害にはならないでしょうが、その逆な遺伝子を持っている人の情報だったら・・・・。

純粋に科学的な好奇心が旺盛な科学者にとっては、その遺伝的な情報が人体にどのような“影響”を及ぼすのか?が最大の関心事であり、その他のことには無頓着、、、この資質は研究者にとっては大切であるわけでして、結果的にその事を責めることはできません。

でも、研究者と言ったって、ピンからキリまでいるワケで、、純粋で無垢な人たちばかりじゃなく、、全ゲノムシーケンスの解析はすでにに1000ドルになっているらしいですから、誰でも簡単に出来る、、、、

「だから、倫理規範が必要だろ!」ってことで、このようなものを4年に一回改定しているわけです(多分・・・苦笑)。


ふーん、じゃ、内容はどんなものなの?

・・・・(はっきりいって、読む気がしません。読みたい人はリンクを辿って読んでくだされ

というわけで、一昨日の「30 年間のマンモグラフィ検診が乳癌発生率に及ぼした影響」でも指摘した通り、個の医療が不可能な現状では、当然、事前に「この治療が、この人に効果があるのか?」なんて、わかる由もないのです(前出のクリゾチニブなどのように、理論的にこの人には効かないって方は、ちょっとずつわかりつつあるけど)。

だから、いきおい、古典的な平均値にのっとり、ブロイラーのように、(がんが)見つかりゃ、ハイ治療しましょ・・ってなるわけです。

そもそも、厳密な意味での“がん”が定義できてないわけですから、「念のため」とがんの診断基準を甘くすると・・・・がん患者が増えて、、、、当然、放っておいても自然に治癒しちゃう“新生物”が出来ちゃった人までもが“がん患者”にされるから、見かけ上の“治癒率”は向上し、、、、それが、「早期発見のおかげ」だと、マスコミとかが、言いふらすから、国民は勘違いし・・・・・・って構図なのでしょう。


さて、こういうロジックで話を進めると、当然、不要な治療を行わない事が出来るようになり、不要な治療の副作用で苦しむ人を救える半面、、、、「不治の病の人を見捨てるためのイイワケ作りか?」と非難される恐れもあるわけです。

「人間は、みな、平等なんだろう?」
「治ろうと、治るまいと、同じ治療を受けさせろ!」

とか。

でも、これにしたって、厚生労働省が認可している“抗がん剤”に完治をうたっている薬は無く、その効果は、せいぜい数か月の延命なのです。それにもかかわらず、「抗がん剤はがんを治癒させることが出来る薬だ」と勘違いしているから、「治療を受けることに意義がある」とばかりな感情もわいてくるんだと思います。

でも、この“数か月の延命”が、どれくらい“貴重”で“かけがえのないもの”なのかは、人によって、さまざまですよね。

それに、発病してない人に、「あなたは将来・・・・」っていう権利がだれにあるのか?

難しいですね。

ここまでくると、そもそも、「個の医療を性急に求めることは是なのか?」とも思っちゃいます。個の医療を進めるということは、良い面の他に、必要のない人には無駄な治療は行わないという残酷な面も持ち合わせているわけですから。

多分、こういう問題を、科学者や医療提供者だけで論じることに、無理があるんだと思います。

でも、しかし、個の医療とは別に、データベースつくりの為に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究には、十分な予算を付けてほしいもんです。「機が熟してから始めよう」では、日本の医療費の=貴重な税金の半分は“外資系企業”の懐に入っちゃうわけですからね。

今回改定される指針が主に想定しているのは、主に遺伝病(頻度は極めて稀ですが、疾患発症のリスクの高い一つの遺伝子によって発症する疾患)の遺伝子解析とのことだそうですが、これが研究の足かせにならないことを願います。

そして、研究予算の配分、、、次の政権に期待します。間違っても民主党のような「二番手じゃいけないんですか」みたいなことを考えている人たちには、任せたくありません。

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November 28, 2012

30 年間のマンモグラフィ検診が乳癌発生率に及ぼした影響

20121128_3mouseこの研究の背景には、『検診は、生命にかかわる疾患を、より早期に、治癒可能な段階で発見するものでなければならない』といった、医療従事者に課せられた“使命感”と、世の中の人々の“希望”に叶うものであって欲しいという“期待”が入り混じっているように感じる。

裏を返せば、『生命にかかわる疾患は、ほんとに、早期発見で治癒が可能なのか』という疑問が、医療従事者の側に、潜在的にあることを示しているともいえる。

結果は、、、、無難なところにまとめちゃってるのかなぁ~って。

個人的には、命に係わる疾患は、早期だろうと後期だろうと、治癒率は変わらず、すなわち治療に反応する人(体質)だけが治癒するって思ってるんだけどね。

だけど、治療を開始する前に、「誰が治療に反応するのか?」を探り当てるのは、非常に難しい(代謝酵素や受容体の多型だけにとどまらず、もっと多次元での話で)。その難しさの中で、医療従事者は「あたなには治療は無駄です」なんてとても言えない。

いろんな、問題(私は“医療は科学ではなく社会学である”が持論です)が絡み合って、さらに問題を複雑にしているものの一つに、この“検診”があるんだろうと思う。

Effect of Three Decades of Screening Mammography on Breast-Cancer Incidence

A. Bleyer and H.G. Welch


背 景

死亡率を低下させるためには、検診は、生命にかかわる疾患を、より早期に、治癒可能な段階で発見するものでなければならない。したがって、効果的な癌検診プログラムは、癌が早期に発見される率を高めると同時に、後期になって受診する率を低下させるものである。


方 法

サーベイランス・疫学・最終結果(SEER)のデータを用いて、1976~2008 年にかけての、40 歳以上の女性における早期乳癌(非浸潤性乳管癌、限局癌)および後期乳癌(局所癌、遠隔転移)の発生率の動向を検討した。


結 果

米国におけるマンモグラフィ検診の導入は、各年に発見された早期乳癌の症例数が 10 万人あたり 112 例から 234 例と、2 倍の増加に関連しており、増加の絶対数は 10 万人あたり 122 例であった。同時に、後期癌で受診する率は、10 万人あたり 102 例から 94 例へと 8%減少し、減少の絶対数は 10 万人あたり 8 例であった。一定の基礎的疾病負担があると仮定すると、検診によって追加的に早期癌と診断された 122 例のうち 8 例のみが、進行癌に進展すると予想された。ホルモン補充療法に関連する一過性の超過発生を除外し、40 歳未満の女性の乳癌発生率における動向で補正すると、この 30 年間で 130 万人の米国人女性で乳癌が過剰診断された(臨床症状の発現にはいたらなかったであろう腫瘍が検診で発見された)と推定された。2008 年には、70,000 人以上で乳癌が過剰診断されたと推定された。これは診断されたすべての乳癌の 31%に相当する。


結 論

早期乳癌の発見数は大幅に増加したにもかかわらず、マンモグラフィ検診により、進行癌で受診する率はわずかしか低下しなかった。どの女性が影響を受けたのかは確かではないが、この不均衡は、新たに診断された乳癌のほぼ 1/3 に相当する大幅な過剰診断があったこと、また、検診は乳癌死亡率に対して影響があったとしても小さいことを示唆している。


N Engl J Med 2012; 367 : 1998 - 2005.
Copyright (C) 2012 Massachusetts Medical Society. All rights reserved.


もひとつ、ちょっと古いんだけど、これなんかも、医療従事者は知っているけど、その真実を患者さんに言えない代表なんじゃないかな?
進行癌に対する化学療法の効果に関する患者の期待

Patients' Expectations about Effects of Chemotherapy for Advanced Cancer

J.C. Weeks and others


背 景

転移性の肺癌または大腸癌は、化学療法によって生存期間が数週間から数ヵ月延長し、症状が緩和される可能性があるが、治癒は得られない。


方 法

癌治療転帰調査・監視(CanCORS)研究(全米規模の前向き観察コホート研究)の参加者で、癌診断後 4 ヵ月の時点で生存しており、新たに診断された転移性(IV 期)の肺癌または大腸癌に対して化学療法を受けた 1,193 例を対象とした。化学療法によって治癒する可能性があるという期待をもつ患者の割合を明らかにするとともに、この期待に関連する臨床的因子、社会人口学的因子、医療制度的因子を同定することを試みた。データは診療録の包括的な再検討のほか、専門の面接者による患者調査から得た。


結 果

全体で、肺癌患者の 69%と大腸癌患者の 81%が、化学療法によって癌が治癒する可能性はまったくないことを理解しているという回答をしなかった。多変量ロジスティック回帰では、化学療法に関する誤った考えを報告するリスクは、大腸癌患者のほうが肺癌患者よりも高く(オッズ比 1.75、95%信頼区間 [CI] 1.29~2.37)、非白人患者やヒスパニック系患者では非ヒスパニック系白人患者よりも高く(ヒスパニック系患者のオッズ比 2.82、95% CI 1.51~5.27;黒人患者のオッズ比 2.93、95% CI 1.80~4.78)、医師とのコミュニケーションについてきわめて良好と評価した患者では、あまり良好でないと評価した患者よりも高かった(最低三分位群に対する最高三分位群のオッズ比 1.90、95% CI 1.33~2.72)。教育水準、機能状態、意思決定における患者の役割と、化学療法に関するそのような誤った考えとの関連は認められなかった。


結 論

不治の癌に対して化学療法を受けている患者の多くは、化学療法によって治癒する可能性は低いことを理解していない可能性があり、そのため、十分な情報に基づいて、自身の意向に沿った治療を決定する能力に欠けているおそれがある。医師は患者の理解を深められるかもしれないが、これは医師に対する患者満足度の低下という代償を伴う可能性がある。(米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた。)


(N Engl J Med 2012; 367 : 1616 - 25.)
Copyright (C) 2012 Massachusetts Medical Society. All rights reserved.


上は、言葉悪くいうと、「治るかどうかわからない治療に自己満足的な望みをかけて、湯水のごとく医療費を使っている現実」が、そこにはあるということだ。

結論にある「不治の癌に対して化学療法を受けている患者の多くは、化学療法によって治癒する可能性は低いことを理解していない可能性があり、そのため、十分な情報に基づいて、自身の意向に沿った治療を決定する能力に欠けているおそれがある」という言葉は、重く受け止めなければならない。


無駄を省くという意味でも。


久しぶりに、こんな事を書こうと思ったのは、昨日、古い友人から電話があったからだ。この友人は特定の政党を応援しているので、総選挙が近いから“お願い”の電話をかけてきたってワケなのだが。。。

そのお願いは「ハイハイ、じゃ入れとくよ」って簡単に済んだんだけど、、、、

最近の私は、政治に期待しても報われない、、、などと厭世的になっているせいもあって、世間話が消費税に及ぶにいたり、『増税する前にやることあんだろう?』って持論をぶちあげる羽目になったからだ。


日本では予算の中に占める医療費がかなり多くて、年々“兆”単位で増えている。

その為に、もうすぐ消費税率が上がろうとしている。

いや、国民の血税を「無駄なところ(医療費)に使うんじゃない」と言ってるんじゃない。

効果があるのかどうかも分からない行為を個人的な“希望”、“期待”の為に行うことの是非を問うことなしに行うな!と言いたのである。

さらに、そういうことを議論の俎上に載せもせず、続けることが、上の勘違いのように国民に「医療は万能である」と勘違いさせることにもつながるからだ。

それでも、国民の51%が、効果が無くても“希望”持ちたいというのであれば、私だって税金は当然払うのだ。民主主義国家の日本人だからね。医療を医学的な面からだけ論じるほど“お子様”じゃないし。

それに、ここにも何度も書いてるけど、医学、医療の限界に幻滅し、自分の仕事に自信を持てなくなり、落ち込んでいた私はロシュフコーの言葉「希望はずいぶんと嘘つきではあるけれど、とにかく私たちを楽しい小径(こみち)を経て、人生の終わりまで連れて行ってくれる」に精神的に救われてから、医療は患者さんに“希望”を与えるものであるという考え方に変わったこともあるし。

とはいえ、日本に石油が湧き、無尽蔵にお金が使えるなら話は別だが、限りある原資をどのように配分するのかということについては、人間、一人一人、価値観が違うわけだから、現実から目をそらさず、真実を公開し、その上で、どうするのがいいのか、“政治的”に決めてほしいわけなのだ。


でも、今、そんなことを言ってる政治家を私は知らない。というか、最近、「どうせ、そんなこと言える政治家なんているわきゃねぇよな。みんな“いい人”になりたがってるだけだからね」って思ってるから、テレビも見ないので知らないだけかもしれないけど。

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November 10, 2012

スタチンの使用と癌関連死亡率の低下

20121110_disturbing_issue久しぶりの、真面目な?エントリーです。

タイトルの論文は、NEJM NOVEMBER 8, 2012 VOL.367 NO.19 に掲載されており、いろんなところで話題にされています。

この論文を目にした時、複雑な思いがこみ上げてきた。「やっぱりねぇ~」「でも、いまさら・・・」「なんで今頃・・・」「こんなんじゃ、全然スッキリしないんだよねぇ・・・」などなど。

コレ、自分の中では、かなり前に、一応の決着がついていて(理由はわかんないってこと)、「理論的にはそうなるはずだけど、でも、実際(臨床)はどうなんだろう?」って思っていたことことなのです。

このブログで「スタチン」をキーワードに検索すると、November 19, 2002 あたりから気にし始めているみたいだ。

10年前の11月に(10年経った今月に、こんなことを思いださせてくれるような論文の掲載はオレのためなのか???なんちゃって)、『スタチン系薬剤の作用機序』なんてタイトルで、今読むと、ちょっと恥ずかしいくらいに、これで全てが説明できるかのような調子で文章を書いている。検索されたタイトルを流れに沿って、読み返してみると、なるほど、現象(表現型)に対する分子生物学的なロジックは、「色々あるんだなぁ」と理解していく過程が読み取れる。

こんな紆余曲折があって、現在、「(細かいことが)わかればわかるほど、わかんないことが増えるじゃん」って境地に至り、漢方薬を見直したりしているわけなのだが・・・。

とりあえず、NEJM の論文を読んでいただいて・・・・

Statin Use and Reduced Cancer-Related Mortality

S.F. Nielsen, B.G. Nordestgaard, and S.E. Bojesen


背 景

コレステロールの利用量を減らすことにより、癌の増殖や転移に必要な細胞増殖が制限される可能性がある。われわれは、癌と診断される前に開始されたスタチンの使用は、癌関連死亡率の低下と関連するという仮説を検証した。


方 法

デンマークの住民全体で、1995~2007 年に癌と診断された患者を 2009 年 12 月 31 日まで追跡し、死亡率を評価した。40 歳以上の患者では、18,721 例が癌と診断される前からスタチンを定期的に使用しており、277,204 例にはスタチンの使用歴がなかった。


結 果

スタチン使用者の未使用者に対する多変量補正ハザード比は、全死因死亡について 0.85(95%信頼区間 [CI] 0.83~0.87)、癌死亡について 0.85(95% CI 0.82~0.87)であった。スタチンの 1 日規定量(1 日あたりの推定平均維持量)別の全死因死亡の補正ハザード比は、1 日量が規定量の 0.01~0.75 倍であった患者では 0.82(95% CI 0.81~0.85)、0.76~1.50 倍であった患者では 0.87(95% CI 0.83~0.89)、1.50 倍を超える患者では 0.87(95% CI 0.81~0.91)であり、癌死亡のハザード比はそれぞれ 0.83(95% CI 0.81~0.86)、0.87(95% CI 0.83~0.91)、0.87(95% CI 0.81~0.92)であった。13 種類の癌別にみても、スタチン使用者の癌関連死亡率はスタチン未使用者と比較して低下していた。


結 論

癌患者におけるスタチン使用は、癌関連死亡率の低下と関連している。このことから、癌患者を対象にスタチンを検討する試験が必要であることが示唆される。


N Engl J Med 2012; 367 : 1792 - 802.
Copyright (C) 2012 Massachusetts Medical Society. All rights reserved.


血中のコレステロール値だけに注目して、この現象を説明できるかというと、そんなことはありえない。最近じゃスタチンの pleiotropic effect などで説明しているけど、文字通り、多面的すぎて、ともすれば、とっちらかって収集つかないのが現状。世間じゃ、コレステロールは悪者にされてるから、コレステロールを下げれば“いいこと”ありそう、、ってんで、コレステロール値と関係ありそうなんだけど、、、(薬を使わなくって、すなわち、体質とか環境要因=栄養失調とかで低コレステロールの人はがんが多いって疫学データがあるそうで、それをスタチン服用と結びつけて、、、試験のやり方によっちゃ、がんが増える結果がえられんですよ、、、コレステロールを下げすぎるとがんになるなんて理屈もあるそうです)、、、

血中のコレステロール値を薬によって低下させるだけなら、その合成経路のどこかをストップすればよいのだが、スクアレンを合成する酵素を阻害するなら、中間産物のファルネシルピロリン酸の量は逆に増える。

理論的には、このコレステロール低下作用で、がんは増える。。。っていうか、Ras のファルネシル化が進む(筈)。Ras は細胞膜に局在しないと役割を果たさない。その局在するためのアンカー(繋ぎ止める錨)がファルネシル化。そして、Ras は、“がん遺伝子”と呼ばれている。。。


私が知りたいのは、スタチンのがん予防効果が、“Ras = 細胞増殖因子の受容体機能に及ぼす影響”の結果なのか?ということなのだ。

今回の論文では、それは全くわからない。この10年、知りたいところ、すなわち、“核心”である“ファルネシルピロリン酸の量”について、ヒトで検討した研究が無いのだ。

「そんな細かい事、わかんなくったってイイじゃん」との思いもあるのだが、基本的に私は、知りたいことがわからない、奥歯に物が挟まったような状態に身を置くことは好きではない。

やっぱりどうしても、そこん所が、知りたい・・・・知りたい・・・・。

武田薬品が作ってたスクアレン合成酵素阻害薬 TAK-475 はどうなったのであろうか??これで、ヒトでがんが増えれば、、、、、決定的?


もうひとつ、ついでに、最近、気になっていることが、、、、iPS 細胞のノーベル賞もあってか、臨床応用に関連して、、、、“ヘテロ接合性の消失”が気になっている。

というか、X染色体以外では、対立遺伝子は、ほんとに両方(父方、母方)とも転写されてるのか?という、最も基本的な疑問が、よくわからないからなのだ。

いわゆる“がん化”で、“ヘテロ接合性の消失”を理解しようとすると、もともと、父方か母方のどちらか一方の遺伝子が“機能不全”しており、そこに、機能が保たれた方が不全に陥って、、、、ってことで、一般には理解されている。でも、常染色体でも、X染色体みたいになっていれば、話は、もっと簡単だ。

そんなところに、下の論文が・・・・

うん?じゃ、iPS は、大丈夫なのか? iPS を造血系の病気の治療に使ったとして、、、対立遺伝子の発現は、フレキシブルに変化するのか??

もっとも、iPS を幹細胞の状態のまま、ヒトの体に戻すことはしないだろうから、こんなことは、気にする必要も無いのだろうけど、、、、気になる。

幹細胞が非対称分裂する環境(ニッチ)では、その辺、どうなってんだろう??


話は戻って、老化(=ニッチの減少した状態)は、がん発生が多くなる。がん発生のすべての原因が“ヘテロ接合性の消失”でないことはわかってるんだけど、老人のがんが多いのは、もともと、対立遺伝子の片方が機能不全とするよりは、がん発生の多い臓器の細胞では、遺伝子発現が、X染色体みたいに、父方か母方がどちらか一方のほうが、説明しやすいように感じているのだが、いかがでしょうか?

(なんか、基本的な勘違いをしているような気もするのだが・・・・・)

発生: 幹細胞がとりうる2通りの経路

Nature 490, 7421

2012年10月25日

ゲノムの大部分では、対立遺伝子の両方が発現している。

つまり、2つの染色体上の同じ遺伝子が転写されているが、いくつかの部位では母系あるいは父系のどちらかの染色体の遺伝子のみが発現しており、そのような部位の1つが免疫グロブリン領域である。

今回、初期の造血幹細胞では、個々の細胞が2つの対立遺伝子のどちらでも発現できることが明らかになった。

しかし、このような細胞は、リンパ系細胞の発生が進むにつれて、父系あるいは母系のどちらかの対立遺伝子のみを発現するようになり、この選択はその後もクローン的に受け継がれる。

このような拘束は、2つの対立遺伝子間での複製時期パターンの変化と相関している。

この機構は、2つの異なる状態を作り出す方法を持たせることで、幹細胞にこれまでに知られていなかった形の幹細胞可塑性を付与している。

Letter p.561
doi: 10.1038/nature11496

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