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February 04, 2012

この現象は“行き当たりばったり”なのか?それとも計画的なのか?

20120204_frog生命現象の根冠をなす現象に、行き当たりばったり?の現象がかなり関与している証拠が見つかっている。もしかしたら、これは、生命現象に普遍的にみられる現象なのかもしれない。

細胞分裂では、娘細胞はクローンであるとして、物事を考える“くせ”が、我々には“染み付い”ている。例外は減数分裂で、しかも、形態までも含めると卵子の減数分裂だけだと。

しかし、免疫担当細胞や嗅覚細胞では、クローンすなわち、均等(平等)な分裂ではなく、不均等な分裂をすることで、機能の多様性を獲得しているらしい。

とりあえずは、以下の二つをお読みくだされ。これって、すげぇ~よ。

運命の決定は確率論的、或いは非対称的?(Stochastic or Asymmetric Fate Determination?)

Science January 20 2012, Vol.335

適応性免疫応答の際に、Bリンパ球は急速に分裂し、そして抗体-分泌性形質芽細胞や記憶B細胞等のエフェクター細胞集団に分化する。

この多くはまた、イソタイプスイッチと呼ばれるプロセスを通して、それらが分泌している抗体のクラスを変える。

このプロセスの際に、或る細胞は死んでいく。

しかしながら、これらの細胞が自らの異なる運命を確率論的な、或いはプログラムされた様式で獲得しているのかどうかは不明である。

Duffyたち(p. 338,1月5日号電子版)は単一細胞トラッキング法を用いて、刺激されたBリンパ球の分裂、形質芽細胞への分化、イソタイプスイッチ、及び死に関するその時間を決定した。

統計的解析と数学的モデルにより、これらの細胞の運命決定はランダムな時計の結果であることが明らかになった:どのタイマーが最初に終わるか(分裂、分化、或いは死)が、その細胞の運命を決めていた。

Barnettたち(p. 342,12月15日号電子版)は、非対称性の細胞分裂(これはT細胞におけるエフェクター細胞の運命決定に寄与していると考えられている)が、Bリンパ球において作用しているかどうかを決定するために調べた。

実際に、祖先の極性タンパク質に加えて、胚中心のBリンパ球のアイデンティティの開始と維持にとって重要な因子は、非対称的に分布し、そして細胞分裂の間その非対称性を維持していた。

Activation-Induced B Cell Fates Are Selected by Intracellular Stochastic Competition
Asymmetric B Cell Division in the Germinal Center Reaction


2012年01月26日

遠藤 啓太 助教
東京大学 分子細胞生物学研究所 脳神経回路研究分野

嗅覚は進化的に古くから受け継がれてきた感覚で、動物の生存に大きな役割を果たしている。嗅覚神経細胞の表面にある受容体で匂い分子を受容し、その情報を脳に伝え、えさと毒や交配相手と敵を識別して適切な行動を引き起こす、というプロセスは動物に共通するもの。嗅覚がユニークなのは、ひとつの嗅覚神経細胞はひとつの匂い分子受容体を発現し、匂い分子が結合したときの刺激を神経線維を通じて一次嗅覚中枢内の決まった領域に伝えること、また、このような嗅覚神経細胞を多種類用意し、それらの組み合わせとして複雑な匂いを認識できるようにしていることだ。嗅覚神経細胞はヒトでは約350種類、マウスでは約1000種類、ショウジョウバエでは約50種類が存在することがわかっている。ただ、嗅覚神経細胞がどのように種類を増やしていくのかについては、まだ謎が多い。

東京大学 分子細胞生物学研究所 脳神経回路研究分野の遠藤啓太助教らは、このほどショウジョウバエの嗅覚神経細胞の分化において、Notchシグナルの非対称な活性化とシグナルを受ける標的遺伝子のエピジェネティックな発現制御が細胞運命を決定するという新しいメカニズムを報告した。これは理化学研究所 脳科学総合研究センター ムーア研究ユニットのエイドリアン・ムーア ユニットリーダーらとの共同研究だ。

Notchシグナルは細胞運命決定のスイッチとなるもので、1回膜貫通型受容体であるNotchの細胞外ドメインにリガンドが結合すると、細胞内ドメイン(NICD:Notch intercellular domain)が切り離され、細胞核内に入り、細胞運命の決定に働く遺伝子群を発現させる。

遠藤助教は、2007年、ショウジョウバエの嗅覚神経細胞の発生過程において、Notchシグナルが活性化される細胞とされない細胞が存在し、その違いによって異なる細胞運命が生み出されることを明らかにしている。

今回の研究では、まず、嗅覚神経細胞が前駆細胞から複数の分裂を経て生み出される発生過程で、Notchシグナル抑制因子の分布やNotchシグナルの標的遺伝子の発現を観察した。すると、細胞分裂のたびにNotchシグナル抑制因子が不等に分配され、生まれた2つの娘細胞のうちの一方だけでNotchシグナルが活性化していることがわかった。「Notchシグナルの非対称な活性化が分裂のたびに繰り返し起こることで、細胞の個性が多種類に分化している」と遠藤助教は説明する。

また、Notchシグナルが活性化した細胞が分裂してできた娘細胞では、核内因子HamletがNotchシグナルの標的遺伝子E(spl)m8の発現を一時的に弱めることで、細胞運命の決定に関わっていることも明らかにした。hamlet遺伝子は、ムーア ユニットリーダーが2002年にショウジョウバエの背中の触覚神経細胞の分化に関わる遺伝子として同定したもの。「Notchシグナルの標的遺伝子の発現が細胞分裂後の娘細胞の両方で高いままだと、再び起こるNotchシグナルの非対称な活性化によって異なる細胞運命を生み出すことができないと考えられる。hamlet遺伝子が突然変異を起こしているショウジョウバエでは、E(spl)m8の発現が高いままとなり、嗅覚神経細胞で発現する匂い受容体の種類も一次嗅覚中枢内の神経線維の接続先も変化してしまった」。

さらに、ショウジョウバエの培養細胞であるS2-N細胞を使ってNotchシグナルを人為的に活性化し、Notchシグナルの標的遺伝子のひとつであるE(spl)m3遺伝子を発現させた実験では、NotchシグナルがあってもHamletを同時に発現させると、E(spl)m3遺伝子の発現が抑制された。このとき、Notchシグナルの標的遺伝子領域を含んだクロマチン構造の状態を調べたところ、Hamletが発現すると、E(spl)m3遺伝子領域においてヒストンのメチル化状態の変化とクロマチン構造の凝集が起こっていた(図参照)。「この凝集によって、Notchシグナルの標的遺伝子の発現を活性化する転写因子がE(spl)m3遺伝子領域に結合できなくなり、Notchシグナルの標的遺伝子の発現が抑制されているのではないか」と遠藤助教。

これらのin vivoのデータと培養細胞での実験結果から、嗅覚神経細胞の多様な細胞運命は、Notchシグナルの非対称な活性化の繰り返しと、Notchシグナル標的遺伝子のクロマチン構造の変化を介した発現調節によって生み出されていることが示唆された。これは、シグナルの活性化の制御だけでなく、シグナルに対してその標的遺伝子が反応しうるかどうかを制御する機構によっても細胞運命が調節されているという新たな知見となった。

「Notch、hamletはともにヒトの相同遺伝子がある。また、嗅覚神経細胞の分化以外でも、細胞運命の決定にNotchシグナルを使っている発生現象は多く知られており、同様なエピジェネティックな遺伝子発現制御機構が使われている可能性があるのではないか。今回の発見がiPS細胞の分化メカニズムの解明などにも役立てればうれしい」と遠藤助教は話す。

ショウジョウバエの嗅覚神経細胞は50種類すべてが同定され、それぞれ一次嗅覚中枢のどの領域に接続されるのかが明らかになっているため、神経回路とその機能との関係を調べるのに適した実験系である。遠藤助教は、今後は、約20種類あると考えられる嗅覚神経細胞の前駆細胞の分化の機構のほか、嗅覚神経回路による匂いの認知機構についても研究したいと考えている。


22120204_notchNotchの細胞内ドメイン(NICD:Notch intercellular domain)は、核内でタンパク質CSLと複合体を作り、Notchシグナルの標的遺伝子を発現させる(図上)。しかし、核内因子Hamletが発現すると、標的遺伝子領域を含むクロマチン構造に凝集が起こり、Notchシグナルを受けられなくなって、標的遺伝子が発現しなくなる(図下)。


先日、実習に来ている学生に、こんな質問をしてみた。

もし、君が、この宇宙でただ一人の人間として生まれたとする。生まれた瞬間からひとりぼっちだ。ひとりじゃ成長できないという問題は無視して、、、、

君が『自分は病気だ』と感じるときは、どんな時?って。

●検査をして“異常”が見つかったとき。
●明らかに寿命よりはやく死んでしまうような状態に陥ったとき。
●頭やおなかが痛いとき。
などなど。

いつもと自分と違う状態である「頭やおなかが痛いとき」はいいとして、ほかのは全部、他人と比べることでしか、自分を評価できないよね?

じゃ、他人と比べなかったら、生まれてから35年で死んでも、病気だって思わないんじゃない?(この場合は、宇宙でひとりぼっちの君を、別な観察者として俯瞰しているもうひとりの君がいるとして)

じゃ、もう一度聞くけど、病気って何?  健康の定義は?

こう切り替えしたら、しばらく考え込んでしまった。


第3期の学生は1名である。第1期、第2期の学生は2名同時に指導していたので、学生同士の議論をメインに、私がちょっとだけ・・・・ってパターンだったけど、今回は、かなり濃厚に対応することになっている。


人間というのは、非自己との比較においてのみ、自己を“感じ取る”ものらしい。

そういう環境で進化してきた生物だからしょうがないとはいえ、かなり“曖昧”な生き物だ。定義すら明確に出来ない状態の“病気”ってヤツを治そうともするんだから。

で、自己は、非自己との関わりで形成されるもんだから、同業だけで集まり、互いに褒め称えあっていると、一方向に助長される。

病気の“治し方”や“その他のインターベンション”に、絶対的な“正解”があると思い込むようになる。

自分だけで思い込んでいるだけならまだしも、それが、誰しもが同等に“価値がある”と感じていると思い込んでいる人間も、たまに見受けられる。

そう、井の中の蛙ってやつだ。

こうなってしまった人間の対応には、かなり、てこずる。

でも、私なりには、人間を“井の中の蛙”にしない方法は気づいる。だから、学生には“耳にたこが出来る”くらい、うるさく言っている。将来、こんなのが薬剤師になって私のもとの舞い込んできたら、たまったもんじゃないからね。


さて、思い込みとは、恐ろしいものである。

生命現象の秘密を紐解けば、そこには、さらなる秘密が待ち受けている。

思い込みが激しいと、それが見えない。

今回の“ネタ”は、柔軟な発想と自分の知識の対する謙虚さが必要であることを、またまた、認識させられる知見でもある。

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