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December 07, 2010

新型インフル重症例、「季節性」の抗体原因

20101207_dilemma2010年12月6日 読売新聞 に、非常に(私にとって)興味深い記事が掲載されていた。

でも、、、、

---なんだコレ?---

ハッキリ言って、なんとなくわかるんだけど、コレじゃ、免疫に詳しくない医療従事者を含めて、一般の人には、まるっきり、なんのことやらチンプンカンプン鳩ポッホだよねぇ・・・・こんな文章で、機序がイメージできたら、スゲェよ!!

っていうか、日本語で、5人くらいの“伝言ゲーム”の後の文章みたいって言ったら、当たらずとも遠からず?のこの文章の、奥歯にものが挟まった様な感じは、、、

専門用語を使えない“ジレンマ”なんだろうなぁ。。。

涙ぐましい努力の結果の文章を、下に引用しておく。

 昨年世界的に流行した新型インフルエンザでは免疫力の強い青壮年層にも重症例や死亡例が出たが、もともと体内に持っていた季節性インフルエンザの抗体による異常な免疫反応が原因であることが、米バンダービルト大学などの研究で明らかになった。

 新型ウイルスによる重症例の効果的治療法の開発につながると期待される。6日、科学誌ネイチャー・メディシン電子版で発表する。

 研究チームは、新型で入院した17-57歳の54人の血液や肺の組織などを詳しく調べた。その結果、過去に季節性に感染した際にできた抗体は、新型ウイルスとも反応することを確認。この抗体は新型ウイルスの感染を防ぐ力はないが、異常な免疫反応を起こし、肺や腎臓にウイルスたんぱく質などを蓄積する結果、重症化することを解明した。

 この現象は季節性ウイルスの感染では起きないが、1957年に発生した「アジアかぜ」で死亡した中年患者の肺で同じ症状が確認され、新型に特有の現象とみられるという。


というわけで、読売の記事を批評(藪にらみ)したまま書き逃げじゃ、なんだか卑怯だから、ネイチャー・メディシン電子版の英文を訳してみました。
Pandemic influenza viruses often cause severe disease in middle-aged adults without preexisting comorbidities.  The mechanism of illness associated with severe disease in this age group is not well understood1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10.  Here we find preexisting serum antibodies that cross-react with, but do not protect against, 2009 H1N1 influenza virus in middle-aged adults.  Nonprotective antibody is associated with immune complex-mediated disease after infection.  We detected high titers of serum antibody of low avidity for H1-2009 antigen, and low-avidity pulmonary immune complexes against the same protein, in severely ill individuals.  Moreover, C4d deposition-a marker of complement activation mediated by immune complexes-was present in lung sections of fatal cases.  Archived lung sections from middle-aged adults with confirmed fatal influenza 1957 H2N2 infection revealed a similar mechanism of illness.  These observations provide a previously unknown biological mechanism for the unusual age distribution of severe cases during influenza pandemics.

マリンパ訳

パンデミックインフルエンザウイルスは、しばしば、合併症の既往のない中年成人に重篤な症状を惹起する。  この年代の人に、このような重篤な症状を引き起こすメカニズムはよくわかってない。  今回、我々は、この中年成人の血清中に、2009 H1N1 influenza と交差反応する既存の抗体を見つけた、、、が、それは、“免疫”を得られるものではなかった。  (そればかりか)この役立たずの抗体は、2009 H1N1 influenza 感染後、免疫複合体として(重篤な)病態を形成するのだ。  我々は、重症化した個々の症例の血清中に、H1-2009 antigen には低親和性で、肺組織に対して低親和性を示す免疫複合体がターゲットとする同じタンパク質に、高い力価を示す抗体を見つけた。  さらに、免疫複合体により補体系が活性化されたことを示す C4d が、死亡した人の肺に集積していたのだ。  1957年の H2N2 インフル感染で亡くなった中年成人の肺組織標本で、同じような発症メカニズムが明らかにされた。  これらの観察結果は、インフルエンザパンデミック時には、世代特有の重症化への未知の生物学的メカニズムの存在を示しているのだ。


って、、、、

あんま、変わんねぇ~か。もっとも、読売新聞社はお金があるから、有料のフルテキストを購入して“意訳”してるんだろ。当たり前だけど。でも、我輩は、お金がないから、無料のサマリー部分だけ・・・。まっ、ディテールが不明なのは、そういうワケで許してちょ。


というわけで、、、、読売新聞の記事に“一言”ってのが、今回のエントリーの趣旨じゃなくって、去年、流行に流行った 2009 H1N1 influenza で、大騒ぎした“毒性”の解説、専門家(マスコミ出演好きな医師を含む)が、的外れな解説に終始していた姿を思い出して、笑ってしまった(苦笑だけど)ので、一筆・・・ってワケ。

いろんな人が、いろんな“持論”を展開できるのが、“免疫学”の良いところ。「アレルギーですね」って言っときゃ、患者だって煙にまける。なんかわかったような気にさせられる。“ストレス”と“トラウマ”と、あと、なんだ?  何かを加えて、曖昧の四天王・・・ってか。

冗談は置いといて、、、去年、誰一人として、テレビやラジオで、この機序を予測した人はいなかったな(っていうか、免疫の専門家でもない人の話は、最初から、私、聞く耳を持ってないので、全ての“説”を“拝聴”したわけじゃないけど)。


ポイントは、昔、罹ったインフルエンザの抗体があるかどうかなんだけど、、、、それがあると、2009 H1N1 influenza と結合して免疫複合体を作る。。事がある。。

要するに、“免疫複合体”ってのが、なんなのか理解出来てれば、話は終わる。知らない人にもわかるように書かなきゃいけないから、伝言ゲームみたいになるんだろう。。。


「高齢者は、昔、罹ってたから、、、」「若者は、免疫がないから、、、、」こんなのが主流だったような気がする。去年の理屈。全く、的外れ、でも、結果オーライ。

でも、全ての病気に通ずるんだよね、《全く、的外れ、でも、結果オーライ》が。

だって、ほんとのところ、わかんないんだもん。これって、副作用発現を予測することが、非常に難しいことからも解ると思う。一般の人は、“大いなる誤解”=“医者なら事前にわかる”をしてるから、副作用が出ると、医者や病院が悪者にされるけど、コレって、とんでもなく、おかしなこと。。。。


って思ってタラ、MT Pro で【THE 判例】を連載している弁護士で医師の田邉氏が、こんな事を書いていた。

 薬剤のアレルギーはよく問題になります。アナフィラキシーや重症薬疹など,副作用基金の給付で解決すればよいのに,患者側はそれでも飽き足らずに,処方した医師が悪いとして医師や医療機関を訴えます。

 薬害問題が盛んに言われていた時代には,製薬会社がターゲットになっていましたが,あらゆる副作用を(あるものないものも含めて)なんでも書きまくった添付文書と,訴訟の際の圧倒的な組織力から,弁護士は製薬会社より医者を攻撃対象にしてきます。患者は大変な目に遭っているのですから,裁判官の目線も他のケース同様医療機関側に厳しくなり,結果的に無理筋のトンデモ判決がまかり通るというわけです。そこにはエビデンスも,医学的知見もなく,文献のつまみ食いと強引な事実認定によるjudge based medicineの世界が待っています。


おおっ、なんだか、スカっと爽やかな気分になる文章ですねぇ。

というわけで、ヤッパ、ここに戻ってきました。マスコミ批判。読売新聞。庶民を喜ばせたい気持ちはわかるけど、医療に関しては、希望的観測な記事は、、、やめてね!

  ↓こんな一文が、最悪なんだよ!!
『新型ウイルスによる重症例の効果的治療法の開発につながると期待される』

こんなのが、『患者側はそれでも飽き足らずに,処方した医師が悪いとして医師や医療機関を訴えます』に繋がるんだよ。

Hoshi_ittetsuインフルエンザウイルスが体内に入った後、生物学的反応は、人それぞれってこと。あたかも重症化する万人に治療法が開発できるみたいな記事は、間違ってる!!

ネイチャー・メディシンの論文でわかったことは、去年、重症化した人の一部の機序が解ったってことで、強毒性の機序は他にもいくつかあるし、結局、「These observations provide a previously unknown biological mechanism for the unusual age distribution of severe cases during influenza pandemics.」なんだから。

過剰に怖がったり、怖がらなかったりしないために。そう、粛々と怖がる為にだっ!

※悩める人に希望の光を・・・・勘違いによる間違った憎しみを惹起。これをジレンマと呼ぶ。

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