今回は“sipuleucel-T療法”をネタにして、“よき人”たちの“いい子ちゃん発言”にゆるぅ~く、関節技を極めたいと思う次第である。
えぇ~、まず、“sipuleucel-T療法”だけど、簡単に言うと、前立腺がんの治療法の一つである。前立腺がん患者から樹状細胞をとり、2日間の培養時に前立腺のacid phosphatase (PAP)抗原を添加し、患者自身に戻すという“免疫療法”のことだ。
FDA が認可したこの治療により、4ヶ月の延命が可能だということだ。その詳細な最新のPhase III治験"IMPACT"の結果は、ココ をご覧下され。
で、今回、ネタにしたいのは、その治療費の話。1コースで9万3千ドル(日本円で約744万円)だとさ。
日本で、前立腺がんで死ぬ人が、全て、この治療を受けて、4ヶ月の延命をしたとする。2010年は、約1万人の方が前立腺がんで亡くなったそうだ。この治療の適応がどうのこうのと、、だから、全員がこの治療を受けるわけじゃないとかの細かい話は抜きにして、ざっと、700億円が懸かる計算になる。
そのような高額な治療は、なにも、前立腺がんの専売特許じゃなくって、メラノーマに対する抗体医薬イピリムマブなどは、1コース分(3週間に1回、計4回投与)で12万ドル(日本円で約960万円)もする。他にも、高額な“抗がん療法”は存在するし。
さて、ここで、取り上げたいのが、混合診療。
混合診療を反対する人たちの“言い分”が、「貧富の差により、高度医療を受ける機会が失われるのは、許しがたい」と。
そして、この後は、少し声が小さくなって「全額、保険でカバー出来るのが一番・・・・」と。
さて、現在、日本で混合診療が出来ると仮定して、700万だ、900万だとお金をかけて4ヶ月の延命をした人がいたとして、お金がなくって、この治療が出来なかった人が、出来た人を『羨ましい』『お金持ちだけズルイ』とか感じるだろうか??
---私は、感じないけど---
市民団体なども「所得格差が医療格差に繋がるのはケシカラン」と言うけど、どのような疾患と治療法を想定しているのか、はっきりと言っている団体はない。誰に頼まれたのか知らないけれど、イメージ戦略みたいな事を、行っているようにみえる。
一体、誰が、こんなイメージ戦略を・・・・・。
今年、最後に驚いたのは、Nature 480, 7378 (Dec 2011) に掲載された記事。
以下、引用。
Nature 480, 7378 (Dec 2011)
Highlights: 医学:がんの能動的免疫療法の成功
モノクローナル抗体やドナーT細胞を使う受動的免疫療法は一部のがんに有効だが、特異的で持続的な抗腫瘍免疫の能動的活性化については、広範な研究が行われているにもかかわらず、なかなか成果が上がっていない。
しかし最近になって、前立腺がんに対する自家細胞免疫療法であるsipuleucel-T療法と転移性黒色腫の一部に対する抗がん剤イピリムマブが開発され、この2つの成功は、がん免疫療法に対する関心を復活させることになった。
今週号の総説は、ワクチン、T細胞免疫修飾因子などの能動的免疫刺激因子についての最近の研究を総括したもので、これらは分子標的治療とともに、今後数年内にがんの治療法につながると考えられる。
Review Article p.480
私は、個人的に“免疫学”が大好きで、継続して“勉強”していることもあり、このようなニュースには、学術的に大変興味がある。私が、この業界で仕事を続けていくモチベーションとも言ってよい、知的好奇心を満たしてくれる“成果”が、分子生物学とともに、この分野には溢れているからだ。
しかし、現実の“問題点”として、医療経済的な問題は、避けて通れない。
医療の業界には、いわゆる“隠れ蓑”が多くある。「人の命にはかえられない」ってヤツだ。最後に“一言”口に出せば、正義の味方になれる。言った者勝ち。
そういう意味で、この Nature 480, 7378 (Dec 2011) の記事は、『これらは分子標的治療とともに、今後数年内にがんの治療法につながると考えられる』としてるんだけど、お金には、言及していない。そして、「お金の問題じゃないだろ?人の命が懸かってるんだから」って、暗に言っているようで、“ズルイ”って感じちゃったのだ。(っていうか、医薬品を開発する側になれなかった、やっかみかも。そっちの人間になりたかったから)
ところで、引用中の“イピリムマブ Ipilimumab”だけど、どんなモノかというと、、、
似たようなモノに、トレメリムマブ Tremelimumab ってのもあり、いずれもCTLA-4の阻害作用のある完全ヒト型モノクローナル抗体薬である。
副作用(有害反応)を知る為にも、、、、
---これを知ると、お金持ちを羨ましく感じなくなりそうだから---
これが作用する仕組みを、簡単に紹介しておく。
・免疫応答において、T細胞活性化にはTCR・CD3複合体を介する抗原特異的なシグナルによる刺激と、インテグリンを介する抗原非特異的なシグナルによる共刺激(副刺激)が必要である。
・この共刺激というのが、T細胞表面のCD28と、単球・マクロファージ(抗原提示細胞)表面に発現されるB7(CD80)との結合のことである。
・この二つの刺激によりT細胞は活性化され。
・一方、活性化されたT細胞の表面には、CD152(CTLA-4)が発現され、単球・マクロファージ表面のB7と結合すると、T細胞の活性化は抑制される。
・すなわち、免疫応答においてCD152(CTLA-4)は、T細胞の活性化を抑制する負のシグナルを伝達する分子である。
・B7にはB7-1(CD80)、B7-2(CD86)が区別され、CD152(CTLA-4)の関与するインテグリン/抗原提示細胞のリガンドの相互作用にはCD152(CTLA-4)/CD80と、CD152(CTLA-4)/CD86とがある。
がん細胞を殺傷する目的にはT細胞の活性化が必要であり、その目的には活性化を抑制するCD152(CTLA-4)を阻害することは理に適っていることになるわけだ。
だから、免疫応答を収束させる鍵穴として働く CTLA-4 に結合して、B7 の働きを阻害することにより、活性化T細胞の作用が延長し、抗腫瘍免疫が高まる。。。と。
まぁ、ここまでなら、「いい事だらけジャン」って感じるかもしれないけど、この“仕組み”は、時間軸区に沿って免疫応答を終わらせる働きや、過剰な“免疫応答=炎症反応”を抑制する働きをも担っているわけで。
免疫力は、高ければ高いほど良いわけじゃないのは、この生理現象(生命現象)を人間に都合が良い面から“免疫”と呼び、都合の悪い面を“アレルギー、アナフィラキシー”などと呼んでいることからもわかることだと思う。
同じ現象なので、都合のよい面だけを“増幅”するわけにはいかず、悪い面も“助長”される。
ようするに、、非特異的に、免疫力をあげる結果、自己免疫疾患が発症したり、免疫が関与する炎症反応が酷くなるす・・・ってこと。
また、CTLA-4の作用を修飾する薬剤としては、CTLA-4を阻害するのではなく、逆に刺激するアバタセプトなどもある。
刺激するのだから、免疫は抑制される。アレルギーや免疫機序による炎症性疾患(関節リウマチなどなど)に効くわけだが、逆に、がんに対する免疫機構は弱くなるわけだ。
アバタセプトは完全ヒト型可溶性融合蛋白であり、T細胞活性化に必要なCD80およびCD86 リガンドにCTLA-4類似体として高親和性をもって結合し、CD80やCD86によるT細胞活性化作用を抑える作用をする。
以上は、想定される副作用(有害反応)を知る上での基礎知識ってわけだが、実際(臨床試験)いは、副作用としては下痢と発疹が見られたそうだ。
確かに、他の抗がん剤と比べれば、臨床的な副作用は少ないだろうけど・・・・高っ!
さて、興味のない人には、つまらない話を続けてもしょうがないので、最後に、“毒”が役に立つ話でもして、終わりにしようと思う。
あっ、“本音”トークに関しては、私は、混合診療は大賛成。700万円、900万円を自腹を切って、延命する人たちは、どうぞ、やってください。決して、羨ましがったり、妬んだり、「金持ちが、高度な医療を受けられるのはケシカラン」なんて、心底、思いませんから。
だから、“平等”な保険料は勘弁してくださいっ!!!(ここが一番大事。使った分だけ翌年の保険料は上げて欲しいのだ。消費税あげるなんて、もってのほかだよ)
で、毒が役に立つのは、放射線の話のところでも、さんざん、したんだけど、、、、これも、「現代医学でわかっていることなんて、ほんの少しなんだから、寿命や病気は運命だと思っ受け入れなさい」ってことに通じるのかなぁ・・・。医療は、その人が、納得して満足出来ればOKであって、他人の“結果”と比べて、悩むのは、、、つまんないよ!と。
免疫のために正しく食べる(Eating Right for Immunity)
Science December 16 2011, Vol.334
環境要因は免疫組織の発生を方向づけるとともに、免疫応答も制御する。
Kiss たち(p. 1561, および、10月27日号電子版を参照)は、アリール炭化水素受容体(AhR:芳香族炭化水素受容体)の天然リガンドが、リンパ濾胞と呼ばれる腸の特定化した免疫構造の生後発達と、腸内細菌のシトロバクター(Citrobacter rodentium)に対する防御的応答に重要であることを示した。
食事の中のAhRリガンドは生得的リンパ球プールのサイズを制御しており、AhRリガンドを欠いた食事を与えられたマウスは、腸のリンパ濾胞の発達に障害を持つ。
Natural Aryl Hydrocarbon Receptor Ligands Control Organogenesis of Intestinal Lymphoid Follicles
ようするに、免疫を都合よく働かせるためには、食事が大事って話なんだけど、、、、有害物は拒絶・・・なんてことをしていると、結果は逆で、免疫は弱るかも・・・って話(例によって深読み=薮にらみモード)。
まったの話、AhRのリガンドっていえば、環境ホルモンとして知られるダイオキシン類なんかも、該当するんだからね。まっ、ダイオキシンは代謝を受けにくく体内に蓄積する性質があるから、過剰なタンパク質産生を引き起こすことで、毒性を発現しちゃうらしいけど。
その他の AhRのリガンドで怖いのは、テトラクロロジベンゾジオキシンポリ塩化ビフェニル、ベンゾピレンなんかもあるよ!
まっ、このように「善かれ」とおもってした行為が、逆に悪かったなんてのは、よくあることで、、、どんなに健康的な生活を送ってても“がん”になる時ゃなるし、、、浅知恵で思い悩むより、健康には“能天気が一番”ってことかな?
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